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トンニャン過去編#30 ボビー・グレープ(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「やめて、ネッド」
「トンニャンがいなくなったらどうするんだ?
一生、会えない相手を想って生きるのか?
そんな事、できやしない。だから、俺はもう、あきらめない」
 
アンはもう抵抗しなかった。ただその頬は涙で濡れている。
「・・・ネッド、私、トンニャンの事、忘れられるかわからないのよ」
「いいよ。いつまでも待ってる。いや、トンニャンを忘れてなくてもいい。
俺はアンから離れない。絶対、離れないから」
「ネッド・・・。バカだわ。私、トンニャンが好きだって言ってるのよ。
ネッドが傷つくだけじゃない」
「かまわないよ。それでも、アンが好きだから」
 
 
舞台裏では飛び出したアンを心配する者もいたが、「二人の事は二人の任せればいい。」というトンニャンの言葉に、皆納得した。
だが、納得しないのルーシー・エイビスだ。彼女はチェリーの心配をよそに、舞台の片付けの間に、いなくなってしまった。
 

すべてが片付くと、トンニャンはエレンを送って行った。
同じスクールバスに乗って、同じバス停で降りただけだが、エレンが落ち着かず、トンニャンを離さなかったのだ。
バス停近くのエレンの家は、邸宅というにふさわしく、門から玄関が見えないほど離れていた。
「トンニャン、寄っていかない?」
「玄関まで歩いて行くの?」
「いいえ、迎えの車が来るわ。庭が広いのよ」
「そうみたいね」
何十人の使用人がいるのか。エレンは、この町でも有名なピース財団のお嬢様だった。
 
 

「何なの?あなた、この間も母が一人の時、来たでしょう?」
チェリーはルーシーと、ルーシーの古いアパートの前に来ていた。
「・・・ごめんなさい。勝手に友達だなんて言って」
ルーシーは腕を組んで、あきれている。
「何の為にそんな事?」
「4Bのルーシー・エイビスよね?私は、4Aのチェリー・エンジェルよ」
「知ってるわ。4Cのトンニャン・フェニックス、4Dのコーラ・デビル。そしてあなた、チェリー・エンジェルが転校して来た時、ずい分話題になったもの」
「話題?」
「そう、天使・悪魔・不死鳥。誰でも面白おかしく、考えてみたくなるじゃない」
「あ・・・えぇ、そうね。偶然・・・だけど」

ルーシーは鼻で笑うように、唇をゆがめた。
「その天使が、何の用なの?」
チェリーはうつむいて、言いにくそうに小さく口を開いた。
「あの・・・友達になりたくて・・・」
「え?何て言ったの?」
「ルーシー、あなたの友達になりたいの」
チェリーはやっと顔を上げて、ルーシーを見つめた。
二〇〇七年平成十九年七月二日(月)午前零時(原文一九七六年十一月)

トンニャン過去編#30 ボビー・グレープ(原題「天使チェリー」)

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。
今回は1970年代に描いた、トンニャン過去編「ネッド・グラウンド」の続きです。

トンニャン過去編#31 エミリー・パストへ続く

トンニャン過去編#29 ボビーグレープこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nc523310f608a

トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

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