見出し画像

巴の龍(ともえのりゅう)#7

大悟(だいご)がひろってきた少女は、気がついても

まだ正気ではないようで、丈之介(じょうのすけ)

薬草を煎じたり、野草を粥にして与えたりと

看病が続いていた。

大悟は今日も狩りに来ているが、身が入らない。

少女をひろって来た時、丈之介から聞いた話が

いつまでも耳につき、繰り返し頭をよぎっていた。

それはまだ大悟が生まれる前の、

父・丈之介と母・桔梗(ききょう)の話だった。


北燕山(はくえんさん)を東に下ると

新城(しんじょう)という街がある。

その国は かつて涼原(すずはら)一族

長年支配し、緑豊かな平野を持つ その土地で

人々は平和に暮らしていた。

ところが南の果ての 蛇骨(だこつ)という国から

三つ口定継(みつくち さだつぐ)が、途中の国々を

ことごとく滅ぼし、ついに新城にも 手を伸ばしてきた。

当時 領主であった涼原洸綱(すずはら たけつな)

その妹 桔梗、そして幼いころより桔梗の従者であった

草薙丈之介(くさなぎ じょうのすけ)

獅子奮迅の働きで戦った。

桔梗は姫でありながら、太刀の腕もあり度胸もあったため、

前線で戦ったのだが、結果は惨敗で 涼原一族

チリヂリになり逃げていった。

ずっしりとした丈之介の体を背に、引きずるようにして

桔梗は ひたすら歩いていた。

月の光が標(しるべ)のように、彼らの

行き先を照らしている。


、わたしを・・・捨てて行って くだ・・・さい・・・」

背中の丈之介が、時々うわごとのように繰り返す。

しかし、桔梗には どうしても丈之介を置いて行けなかった。

このままでは 追手に見つかるかもしれない。

もし捕らえられれば、死はまぬがれまい。

それでも、ここで丈之介を捨てるなら、

死んだ方が マシだ。

そう思った時、桔梗は自分の気持ちにうろたえた。


ふと気づくと、前にも後ろにも

いくつもの影が走っている。

追手だ。

桔梗は丈之介の体を肩にかけ

片手で太刀を抜いた。


巴の龍#7

ありがとうございました\(^o^)/


新作駒草ーコマクサー」
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね


SIRIUSの小箱」ってなあに?
過去作品メルマガ HP/リザストはこちらから


巴の龍(ともえのりゅう)#8へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n52797f1e9373

巴の龍#1 こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n6785ce9c010e

もしよろしければ、サポートしていただけると嬉しいです。いつも最後までお読みいただき、ありがとうございますm(__)m(*^_^*)