見出し画像

巴の龍(ともえのりゅう)#8

しかし、もとより立っているのがやっと。

すでに手向かいする力などない。

桔梗(ききょう)は月を見つめ ひたすら祈った。

追手が まさに襲いかからんばかりに

迫った時だ。

月が追手に向かって光り、

三つ首の龍の姿になった。

光の龍は追手に向かって

咆哮するように襲いかかると、

追手はちりぢりに吹っ飛んで消え去った。

そして その光は、桔梗と丈之介(じょうのすけ)

包み込み 光は吸い込まれるように

桔梗の太刀に 飲みこまれた。


「探したぞ、桔梗

三年前の三つ口定継(みつくち さだつぐ)との

負けいくさで、老いた父上は戦死され、

母上も後を追うように亡くなった。

わしは 三つ口定継への憎しみを糧にして、

なんとか生き延びた。

てっきり おまえ達も死んだと思っていたが、

まさか丈之介と 夫婦(めおと)になっていようとは・・・」

突然の兄 洸綱(たけつな)の来訪に、

桔梗も丈之介も 驚くばかりだった。

あれから三年。

あの不思議な三つ首の龍に助けられた後、

この北燕山(ほくえんさん)の山奥で

壊れかけた小屋を見つけた。

丈之介の怪我は ことのほか重く生死をさまよったが、

桔梗の献身的な看病が幸を奏して 一命をとりとめた。

そして どちらからということもなく 夫婦となり

桔梗は小屋での生活に幸せを感じるようになった。

何も望むものはなかった。

それなのに・・・。

「子どもも生まれたのか、二人も。

名は なんと?」

洸綱は 桔梗と丈之介の後ろに隠れるようにしている

男の子に目を向けた。

桔梗も丈之介も 土間にひれ伏している。

「はい。

兄は兵衛(ひょうえ)弟は大悟(だいご)と申します。

二歳と一歳になります」


巴の龍#8

ありがとうございました(≧◇≦)


新作駒草ーコマクサー」
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね


SIRIUSの小箱」ってなあに?
過去作品/メルマガ HP/リザストはこちらから

巴の龍#9へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n58040bb8e854

巴の龍#1 こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n6785ce9c010e


もしよろしければ、サポートしていただけると嬉しいです。いつも最後までお読みいただき、ありがとうございますm(__)m(*^_^*)