元祖 巴の龍#72(地図付)
春に粛清を旅立ってから、もう青葉の季節になっていた。朱欄では暑い戦いになりそうだ。
菊之介は桐紗とともに、久しぶりに水を浴びようと川に来ていた。
ずっと野宿だったが、今日は屋根のある所に泊まれる。女の桐紗には、野宿や体を拭くこともできない旅は、つらかったに違いない。
「義姉上、わたしが見張ってますから、ゆっくり水に浸かってください」
桐紗は菊之介をちらりと見た。
「菊之介、いっしょに入りましょうか」
「な・・・何を言ってるんですか。わ、わたしは後でひとりで入ります」
「ほんとに、まじめを絵に描いたような人。そこがよいのだけれど」
桐紗はさらりと着物を脱ぎ捨てると、川に入って行った。
菊之介はまた赤くなりながら、目をそらして、人が来ないか見張っていた。
しばらくして
「きゃー!」
と桐紗の悲鳴が聞こえた。菊之介は振り返って皮を見ると、桐紗が足を取られたのか、溺れそうになっている。
菊之介は着物を着たまま、バシャバシャと川へ入ると桐紗を抱きかかえた。それから、ㇺッとして立ち上がった。
「義姉上、水が胸までしかないところで、どうやったら溺れるんですか」
桐紗はぺろりと下を出した。
「だって菊之介といっしょに入りたかったのだもの」
「おかげで、着物もずぶ濡れです」
菊之介は濡れた着物を脱いで、薪を集めて火を起こした。
「こんな格好では帰れません。兄上たちになんと言われるか」
桐紗が水から上がって菊之介にすり寄って来た。
「怒ってる?菊之介」
菊之介は目をそらしながら
「怒ってません。怒ってませんから早く着物を着てください」
桐紗は少し不満そうにしていたが、菊之介の言う通り着物を着た。
菊之介は、着物を木に干すと自分も改めて川に入り、水を浴びた。これ以上桐紗のそばにいると、理性を保てる自信がなかった。
菊之介が川から上がった時、濡れた着物も少し乾き始めていた。
天気の良いせいもあるのだろう。これなら夕方小屋に戻るまでには乾きそうだ。
続く
ありがとうございましたm(__)m
地図(モデルは九州ですが、私の線が下手すぎる。2001年作成)
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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