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かげろう奇譚Ⅱ #16

その夏、旧盆のお墓参りのために実家に帰った。
かつて 杜の都市の借家だったこの家は、後年父が買い取り、
小さな平屋だったのが、十数年前に二階建ての住宅に新築された。

道路向かいの銭湯は すでになく、
道路もかつてよりずっと広く舗装されている。
通りの店の様子も すっかり変わり、昔の面影はない。

それでも和美は、地下鉄を降り銭湯のあった通りから信号待ちをしながら、向かい側の実家を見る時、自然と南の方向に首をまわす。
遠くに線路が見える。
子供の頃、道路の途中から川があったが、
その川は舗装された道路となって、線路まで続いている。

そして、失われた川とともに 思いだす。

あの 和美だけの 月を。

かげろう奇譚Ⅱ 終わり
2002年9月 作品

かげろう奇譚Ⅱ #16

最後までおよみいただき、ありがとうございましたm(__)m

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