カオル #20
カオルとユキは、小さなホテルに入った。
高校を卒業したとはいえ、
後ろめたさがあった。
はじめて入るホテルの部屋。
家族と旅行する時に泊ったホテルとは、
だいぶ印象が違う。
カオルもユキも無口になり、
お互いの心臓の音だけが聞こえてくるようだった。
カオルの話が急に途切れた。
晃二は沈黙の中で身じろぎもせず、
カオルの次の言葉を待った。
「俺、ダメだったんだよ!
ユキを抱けなかったんだ。」
カオルが振り絞るように言った。
それはもう、絶叫に近いものがあった。
「前からうすうす感じてた。
もしかしたら・・・って。でも、
ずっと 否定し続けてきた。
そんなはずないって、ずっと・・・。」
ユキはカオルを責めなかった。
むしろ励ましているようにさえ感じた。
ユキは単純に、カオルが緊張していたのだと
理解していたのだ。
だが、カオルは違っていた。
カオルは、わかってしまったのだ。
自分が女を愛せないことを・・・。
「俺は・・・ゲイなんだ。それがわかった時
もう、ここにはいられないと思った。」
カオルは家を出た。
決まっていた進学も家族との生活もすべて捨てて
誰にも告げずに故郷を後にした。
「それからは お決まりの転落コース。
晃二には とても言えないようなことが、
いっぱいあった。」
家を出てから数ヶ月、カオルは事件に巻き込まれた。
酔っ払い同士のケンカなのだが、
たまたまそれがいきすぎて ひとりが刺された。
カオルは その場に居合わせただけだが、
返り血を浴びて動けなくなった。
ありがとうございました(゜_゜>)
カオル#21へ続く
カオル#20
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