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元祖 巴の龍(ともえのりゅう)#31

菊之介と大悟は、菊之介の回復を待って新城に向かった。命を狙われている菊之介が再び新城に向かうには理由があった。

「新城へ行ってみないか」
菊之介が元気を取り戻すのを待っていたかのように、大悟が言い出した

「ずっと考えていたのだ。このまま逃げ回るだけで良いのかと。
俺は母の顔も知らん。おまえが母を気遣うたびに、どのようなものか、どのような人か、考えてきた。

すでに生きているかさえもわからんが、母の消息が知りたい
それに新城はかつて涼原の城だったのだろう。
俺の父や母が生まれ育った町だ。

俺はその町を見たこともないのだ。新城が見たい
そして、母が生きているならば救い出したい
大悟の思いは菊之介の胸に沁みた。

菊之介も母が気がかりでならなかったし、義姉・桐紗のことも気になっていた。
思い起こせば、母・桔梗が命がけで逃がしてくれてから一年の月日が流れていた。

新城は広々とした平野が広がり農業が盛んな土地だった。
また町の中心部には商家が並び、材木町、鍛冶町、染師町、大工町など工業に従事する者の町もあり、充実した城下町だった。城は少し高台に位置し、町全体を見渡せるようになっていた。
城に入るには堀を越えて、石垣をのぼらなければならなかった。


菊之介と大悟は夜陰にまぎれて石垣を登った
菊之介にとって生まれた時から慣れ親しんだ城。

城の内部はほとんど覚えていたが、女人禁制の場が半分ほどあり、その半分については位置関係もよくわからなかった。
それゆえ、もともと菊之介と母桔梗、義姉桐紗の住んでいた西の方より侵入した。

石垣よりはらりと城内に下りると、まず様子を探ることにした。
一刻半後、同じ場所で落ち合うことを約束し大悟と別れた。
菊之介は庭の草木に隠れて、かつての母の部屋に近づいた。

すると頬に涼やかな風が吹いてきて、気配を感じて横を向くと、顔がふれんばかりの位置に義姉・桐紗がいる
桐紗は菊之介を見て微笑んだ。驚く菊之介は、言葉を失った。

菊葉、突然いなくなってから心配しておりました。
こうして無事に帰って来れたとは何よりのことです」

菊之介は顔を下に向けた。
あ・・・義姉上(あねうえ)、わたしのことは、なんと聞いていたのですか」

続く
ありがとうございましたm(__)m

「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ

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