月(ライト)前編
月があまりに明るくて、眠れそうにない晩だった。
わたしは丸窓に顔をつけて、じっと月を見つめていたが、その月に照らされた一輪の花が目に入った。キーボードで検索すると、月夜に開くいくつかの花が画面上に現れたが、どの花かよくわからない。
“月がとっても青いから遠回りして帰ろ”
聞いた事もない歌の詩が現れたが、ふむ、それって今夜のような月かもしれない。
“待てどくらせど来ぬ人の宵待ち草のやるせなさ
今宵は月もでぬそうな“
月が出ない唄ではどうしようもない。
「何をしているんだ?」
突然画面をのぞきこむ顔が、ニュッと肩越しから現れた。
「わたしが入って来たのも気づかないなんて、よほど夢中になっていたのだな。」
そう言われてわたしは首をすくめた。
「いや、ほら、あまりに月が美しいんで、外を見ていたら、見覚えのある花が咲いていてね。けど、何という花なのか思い出せないんだ。」
わたしがそう言うと、彼は、どの花、というように窓の外に目をやった。わたしは外を指差し、月に照らされてますます輝きを増したその花を、もう一度見た。
輝きを増したような・・・するとアレは・・・。
月(ライト)
後編に続く
最新作「駒草ーコマクサー」
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね
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月(ライト)前編
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