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トンニャン過去編#25 ネッド・グラウンド(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

チェリーは自分の無力さに腹が立った。何が天使だ。あんなに貧しい人がいて苦しんでいるのに。天使でありながら、どうしていいかわからない。
何も出来ないなんて。トンニャンの言うとおりだ。何の為に天上界から来たんだ。いったい自分は、何をしているんだ。
 
そして、ネッドの事が頭をよぎった。
アンの事をまだ忘れていないはずのネッド。
そのネッドが、いずれルーシーを傷つけるのではないか。
手をこまねいて、それを見ているしかないのか。

 
 
「ボニー、音楽劇をやるんだって?」
ミス・ボニー・ザートは、同僚のミスター・ディック・ガンに声をかけられた。
「えぇ、音楽を選択している子達が、何か楽しんで形にできるものはないか、と思って提案してみたら皆乗り気で」
「おもしろそうだな。俺の体育もそういうのがあると、生徒達も喜ぶのかな?」
「ディックは、生徒達に人気あるじゃない。スポーツ万能って、憧れるのよ」
「俺、体育の教師だぜ。スポーツ万能じゃなくてどうするんだよ」
「それはそうだけど」

ミス・ザートは、笑いながらミスター・ガンに手をからませた。
「今夜、ディックの所に行ってもいい?」
「・・・誘おうと思ってた。学校じゃ毎日会ってても、ここのところ忙しくて、ちっともプライベートで会ってなかったから」
「・・・うん」
ミス・ザートは、ミスター・ガンの肩に顔をもたれた。
 
 
「音楽劇のキャスト、決まったわよ」
アリス・ジョージャスが印刷されたキャスト表を持ってきた。
「相変わらず情報が早いわね、アリス」
エレン・ピースがあきれたように首をひねる。
チェリーもアンも、あまり興味なさそうにしている。
トンニャンは、同じクラスのエレン・ピースといつも一緒だ。
 
「ミス・ザートが印刷してたのよ。先に一枚もらって来ちゃった」
アリスはペロリと舌を出した。
「それで、配役は?」
コーラが聞くまでもなく、音楽を選択している全員が興味津々だ。
アリスはコホンと咳払いをした。
 
「題名は『眠れる森の美女』これは皆知ってるわよね」
「もう、そんな事わかってるわよ。早く、キャスト!」
トーニもじれてきている。
「主人公のお姫様は、エレン・ピース」
ヒューと口笛が鳴って、拍手がおこった。
 
「魔女がコーラ・デビル。
そして王子様は・・・トンニャン・フェニックスよ」
チェリーとアンが、初めて目を動かした。
二〇〇七年平成十九年六月二十四日(日)(原文一九七六年十一月)

トンニャン過去編#25 ネッド・グラウンド(原題「天使チェリー」)


※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。
今回は1970年代に描いた、トンニャン過去編「チェリー・エンジェル」の続きです。

トンニャン過去編#26へ続く

トンニャン過去編#24 ネッドグラウンドこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n0d0b8c46c59c

トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

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