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むかしむかしあるところに(ちょっとファンタジィ➉)

むかしむかし あるとこころに

特に美人でもなく かといって見られないほどでもなく

特にお金持ちでもなく かといって食べられないほどでもなく

特におしゃれでもなく かといって不衛生ではなく

特に学歴もなく かといって無教養でもなく

特に著名でもなく かといってひとりぼっちでもなく

特に 特に特徴もなく かといっているかいないかわからないのではなく

そんな そんな 女の人がおりました

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特に感動的なこともなく 特に派手なこともなく

かといって気にも留められないほどでもなく

特に目立つこともなく かといって全く存在感がないわけではない

男の人と 結婚しました

特に気負うことなく かといって少しの緊張くらいのことはあって

母親になりました

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大きな大きな波はなかったかもしれないけれど

それなりの子育てや結婚生活のあたりまえの苦労もあって

子育て人育て 人とのしがらみを人並みに体験し

齢をとりました

「気が付くと 私は ベッドに横たわり まわりにたくさん人がいたのよ」

女の人は微笑みました

特に波乱万丈な人生ではなかったかもしれないけれど

最期のときに たくさんの子供や孫に囲まれていたのです

女の人は 煙になりました

花(ピンク)

子供や孫たちは口々に言いました

「おかあさんを思い出すと 取り立てたことは何もなく ありがちな 平凡なことしか思い出せないね」

でもね

「おかあさんは 精一杯 私たちを愛してくれたね」

「あれほど 愛情深い人は ほかにいないね」

煙を見つめる人々は 子供や孫ばかりでは ありませんでした

どこからきたのでしょう

親戚やご近所 古いママ友だけではなく

ここ数年 またはつい最近 知り合った人々

決して人を自ら切らず 真摯に向き合った

何も派手なことなないけれど

何も目立つことはないけれど


そんな人生の終焉を

老若男女を問わず

たくさんの人々が 煙を見送りました


むかしむかしの おはなしです

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むかしむかしあるところに(ちょっとファンタジィ➉)


最新作「駒草ーコマクサー」
かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね

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