砂の葬送 ちょっとSF④
累々と続く砂の葬列。盛り土に眠るのは、この砂浜で亡くなった残骸。
火がついたように泣く赤ん坊は、かれらの生き残り。
飛行機事故で助かったのは、この赤ん坊だけなのだ。
「泥棒だ!」と誰かが叫ぶ。
「カバンの中の金が無くなった!」
砂の民は薄絹の布で顔を隠し、ひそひそとささやきあう。
ヒヒッと笑う、老婆。
「そっちは気を付けな。怖い魔物がいるよ」
老婆の指さす方向は、砂漠の向こうの海。
しかし、その海はガラス戸で仕切られ、ドアは鍵がかかっている。
出られやしないじゃないか。
少女が赤ん坊を差し出す。
受け取れない。
しかし、少女はあきらめない。
バシャッと大きな音がした。
海の方だ。
海の生き物がガラス戸を壊さんばかりにぶつかって来たのだ。
巨大な魚竜の仲間。
イクチオサウルス、そしてあの口が大きいのは、モササウルスだ。
「金が・・・」
海へのドアを開けてわずかに残る岸辺へ、さまよい出る異国の者。
砂の民は、誰も止めようとはしない。
いずれまた飛行機は飛ぶのか。
異国の赤ん坊と二人、いつしか砂に埋もれていく。
20160111
砂の葬送 ちょっとSF④
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