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そぼ降る雨が少女の体を容赦なく濡らしていた。 北燕山(ほくえんさん)の奥深く、 人も通わぬ 獣道で、少女は泥にまみれ 着物をひきずるようにして歩いていた。 杉木立が生い茂り、遠く近く 獣の鳴く声が響いてくる。 少女は足を止めず、ひたすら歩く。 よく見ると着物は ところどころ破け 長い髪も雨に濡れて 顔にべたりとはりつき そして その顔を見た者は 誰もが生気のなさに驚くだろう。 雷鳴がとどろいても 少女は足を止めない。 少女の視線が稲光をとらえた。 「
葛城(かつらぎ)博士邸が取り壊される。 敷地等買い取られた財産すべて、 しかるべき福祉施設等に寄付される。 その情報が耳に 入った時 私はまよわず 葛城邸に向かっていた。 葛城邸は人家より少しそれた山の入口に ひっそりと建っていた。 昔の洋館を思わせる作りで、 大きな門は開いていたが、 広い庭は ついこの間まで 手入れされていた様子が 読みとれた。 私は門から玄関までの数分の道筋 まだ家主が生きているか不安になった。 明日は取り壊し予定日。 家主は
「ジャーナリスト? 女性の方がこんな山奥まで・・・。 いったい このわたしに 何のご用なのですか?」 「・・・お話を聞かせてほしいのです」 「話・・・ですか?」 「あなたは葛城博士が六十年ほど前、 最初に作られた RP7(アールピーセブン)型ロボットですね?」 彼はうなずいた。 「はい、そうです。 わたしはRP7型ロボット・ リュージ」 「あなたが作られてから、この六十年の間に あなたに起こったことを 話してほしいのです。 私は それを書きたい
今から約六十年ほど前、葛城博士はこの研究所を兼ねた屋敷の中で 一体のロボットを完成させた。 それこそがRP7型ロボット第一号・リュージだ。 リュージは二十歳前後の青年の姿をした、 完璧な人型ロボットだった。 博士は、彼に葛城竜次という人間の名前を与え、 自分の息子としての最低限の知識を与えると、 ロボットであることを隠して、 大学に入学させた。 リュージが人の中でロボットと気づかれず生活できるか、 という実験だった。 葛城博士には当時大学を卒業したばかり
リュージは、ロボットとして耀子の部屋の前に立っていた。 管理人に葛城竜次、耀子の弟としての写真入り身分証明書を見せると、 こころよく部屋の鍵を渡してくれた。 リュージが大学を卒業するまで人としての時間を過ごしたが、 葛城博士がRP7型ロボットであることを発表したことによって、 ただの使役ロボットになっていた。 耀子の部屋のドアを開けると、 中のカーテンは閉めきってあった。 リュージはまっすぐにカーテン向かい開け放つと あらゆる窓を開けた。 部屋の中はしばらく帰ってない様子で
「ちょっと!私の持ち帰りの研究資料はどうしたの? 勝手に片づけて、捨てたんじゃないでしょうね」 「書斎にまとめておきました。」 書斎? 耀子は奥の部屋をのぞいた。 そこにはバラバラに あらゆる場所に散乱していたはずものが きれいにまとめられ、分類まで耀子の考えどおり並んでいた。 「先にお風呂はいかがですか?おつかれでしょう?」 リュージに言われるまま、久しぶりに湯につかった。 入るとすぐに洗濯機の回る音が聞こえた。 そういえば、山ほどあった洗濯物が消えてい