エッセイ - きっかけは、モディリアーニ

大学四年生の時に美術好きの友人に連れられて行った美術展で、イタリア人画家モディリアーニの絵画を見た。生前、絵が売れることもなくパリでの貧乏な生活の果てに、大量のお酒と薬物依存により従来の肺結核が悪化し早死にした画家である。彼の絵の特徴は異様に長すぎる顔にある。第一印象は「なんと長い顔だろう、こんなに長い顔の女性が実際にいるはずがない」である。どれも憂いを帯びていてとても悲しそうな顔をしている。大正ロマンの竹久夢二の作品に出てくる美人画によく似た雰囲気なので、とても気に入った。物憂げで哀愁を帯びた夢二の絵は、中学生の頃から好きであった。
それから約25年後の2007年に渋谷の東急文化村美術館で行われた「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」に行った。それまで仕事が忙しく、美術展に行く余裕もなかった。久しぶりに見た彼の絵画に魅了され、芸術に興味を持った。それから、様々なアーティストの作品を鑑賞する為に多くの美術館や美術展に行くようになった。浮世絵などの日本画にも、多くの魅力的な長い顔の女性画があることを知った。だが、彼のように異様に長い顔で哀愁のある美人画は少ない。
最初に好きになった女性アイドル歌手の南沙織も面長であった。そこで、どれだけ長いのか?デビュー曲「17才」のレコードジャケットの写真で顔の縦横比を測ったら1.75であった。この数値は単純に縦の長さを横の長さで割った値である。値が大きいほど長い顔となる。モディリアーニの絵画は2、竹久夢二の絵画は1.85である。昔の古い写真から私の母は1.75であった。そして妻は1.8である(2ぐらいいくかと思ったが)。
そう私は顔の長い女性が好きになる傾向があるのではないかと、薄々気づいたきっかけは、モディリアーニである。