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#194 週末ごとに出現した『日本』~英国在住なでしこ達の挑戦~


つい二日前に、こちらイギリスは夏時間に入りました。
十月からの半年間、日本との時差は九時間でしたが、これからの半年間は時差八時間となります。

こう考えると、イギリスの冬の長さって半端ないなあと思います。
だって六か月間の冬時間が終わっても、まだまだ寒い日々ですから‥‥
暖を取ることには余念がありませんよ。
先日、アイリスオーヤマさんの布団乾燥機がヨーロッパで手に入ることがわかり、買ったばかりで毎晩ホクホク、ホカホカしている私です‥‥
唐草さん(てんやわんやスペイン暮らし、のあの唐草さん)、教えてくださってありがとう!


こんな寒くて厳しい二月と三月に、パッと春を呼び込むイベント的お店をやってみた、今日はそんなお話になります。
といっても、私は中心的存在というよりは、「いいぞいいぞ、そーだそーだ」と乗っかる奴です。文化祭のノリで楽しみたい、アレです。


英国南西部。人口的には白人がほとんどの、多様性に欠けると言えば欠ける、そんな地方に住む私。
これまであまり書いてこなかったのですが、日本人のコミュニティーは存在します。こんな地方にこんなに日本人が居たの⁉と驚かれるほどの人数も居ます。そして、なぜだか女性ばかり。基本、みんな英国人と結婚し家庭を持っています。そこに、ワーキングホリデーや大学に勉強をしに来ている大人の女性も参加されます。
ロンドンと違うところは、純日本人家庭の奥さんがほぼゼロというところ。
なぜなら、こんな田舎に駐在されるような日本企業があるわけないことが理由になります‥‥

なにしろ「日本人が複数集まるところには必ずご馳走がある」と言われているというくらい、食べることは大切で、それはイギリス人との決定的な違いかもしれません。
この私たち日本人が集まるHUBとなっているのが、Yちゃん経営の日本食レストラン。ここに月一回皆が集まり、一品ずつ持ち寄ってランチ会をするのです。それはそれは泣けるくらい素晴らしい食卓ができあがります。
とにかく話題はイギリス生活の工夫や面白い情報、家族の近況‥‥とまあ尽きることがないのですが、とりわけ熱っぽく語られるのが『食』の話。

こんな田舎に、こうじを作って売る人が居てくれて、『MISO (味噌)』に興味あるイギリス人のために味噌づくりワークショップをする人が居る。
納豆、テンペ、キムチを作って売る人が居る。
それらはすべて『発酵』によってできるものです。
考えてみたら基本の味噌・醤油という発酵食なしでは成り立たないのが日本の食生活なのですから。
ここ十年ほどの間にようやく『SUSHI (寿司)』が市民権を得てきたイギリスですが、まだSUSHI=生魚と思っている人もいます。
MISOを買ったはいいけれど、使いこなせていない人も多いようです。
地域の人たちにもっと日本の伝統食の良さを紹介したい、発酵食を広めて健康になってほしい‥‥
そのような気持ちがカタチになりました。
Yちゃんが日本に帰省中の、二月・三月限定のコミュニティプロジェクトが走り出す‥‥


隔週の金・土曜日、みんなでお店を開きました。
SNSを駆使し、それぞれの得意分野で広報活動をしてその日を迎えました。


これはレストランの外。といっても屋根付きのアーケードっぽい通路スペースになっています。
各自が家にあった漆器などを持ち寄ったり、メンバー手作りのピアスやブローチなども並びました。

たちまち日本ショップに



また別の日はこんな感じ


ずらりと並んだ羽織。

売り子のコノエミズ
店内奥には三味線の生演奏も‥‥

後ろ姿の私の羽織は自前ですが、初めて着ました。レトロな柄が洋服と合わせても違和感ないという発見がありました。
羽織を着る機会があってよかった。意外に温かいということも知りました。これからもっと気軽に羽織って使いたいと思ったのです。


基本食べられるすきに手弁当を急いで食べる感じでしたが、時には中で売っているこれをいただきましたよ~。

今回みんなの意見を出し合って確立された『おにぎらずDevonバージョン』


お店前の椅子に座って「いただきま~す」
ああ~「心を込めて作りました」が伝わる味‥‥沁みわたる~

玄米のおむすびの具はすべてビーガン。卵すら使わずとも、とても美味しくできています


ではご覧いただきましょう。
メンバーたちによって開発されたメニューがこちら。


GF、つまり全てのメニューがグルテンフリーなのです


基本はテイクアウトできるもの。その際、梱包は極力避ける、ゴミを出さない提供を心がけました。
味噌汁も、具を食べるのにカトラリーを使う代わりに、すり流しという形で紙コップひとつで飲めるように工夫されています。
甘酒のムースはあらかじめメンバー内で募った空き瓶を利用しています。

メインになったおにぎらずは、塩麹に漬けた鶏肉の入っている方が白米で、ヘルシー志向の人向けのビーガンのほうは玄米で作られています。
『Sushi Sandwich』と呼んでいますが、寿司要素は実はなくて、中身の人参やビーツなどすべて塩だけで発酵させてあります。

小さな店内なので、飲食できるスペースは限られますが、食べていきたい人にはカフェとしても機能しました。

写真はできるだけ人の写っていないものを選んでいますが、お昼時には人の熱気でムンムンしております‥‥

他にもメンバーたちが家で作った春巻きや大福、豆腐ケーキなどの委託販売も


このように、クラフトの好きな人はアクセサリーなどの作品を、料理が好きな人は食べ物を持ち寄ったという『得意』の集結でありました。

デザインができて素敵なロゴやポスターを作る人。
キッチンでもくもくと働くのが好きな人。
ホールを切り盛りし、どんなに行列ができても動じない人。
私のように店先でお客様と話すのが好きな人。
祭りの法被はっぴを着て人込みの中でチラシを配る人。
性格や得意なことが全然違うってことが、こんなにも活きてる!
それをまざまざと感じた二か月間でした。


私は最後までキッチンに入らず、お客様の顔が見えてコミュニケーションを楽しめることに徹しました。
カフェをやらない週末も隔週で出てきます。そこで、くす玉を作る折り紙ワークショップ、そして風呂敷の使い方を紹介する風呂敷ワークショップをやってみました。

くす玉はこんなのです。12枚の折り紙でピースを作り、最後に組み込んでいきます。

クリスマスオーナメントになるように、紐でつるすところまで経験してもらいました


子ども達も大人の女性たちも真剣に取り組んでいます

スタンダードなカフェはない週だったのにもかかわらず「今日は何があるの?」と覗いてくださった人でまた盛り上がり、
まかないのつもりで作ったけど、というちらし寿司を食べたいと言う人などなど‥‥
結局、中で食事をされる人も居て、楽しく忙しく時間は過ぎていきます。


午後の風呂敷セッションも、ゲーム形式でとても盛り上がり、なにより自分の発明でもないのに「Wow!」と感心されている私が一番嬉しかったのでした。
日本人の知恵や工夫、柔軟性を認められるのってなんだか誇らしい。

六通りのバッグの作り方を紹介しているところ

皆さん感心して聴いてくださるので、風呂敷の名前の由来に始まり、調子に乗って『江戸時代には布団の下に大風呂敷を敷いて寝て、火事の際に大事なものを丸めて布団ごと背負って逃げた』なんてことまで喋ってます(笑)


先日より二記事で、『イギリスという置かれた場所に感謝して、覚悟を持って好きなことをしながら生きる』ということを書いてきました。

このワークショップも、地域の人たちに喜んでほしいという気持ちで頑張れる自分が嬉しいと思いました。

人が来なかったら‥‥
場がシラケたら‥‥
そんなふうに失敗を想像してひるむこと、今回はなかったのです。
自分たちが楽しんでできるならそれだけでいいじゃないか、と。
そうして自分が喜んでやっていると、周りがつられて笑顔になっているのを感じました。


冒頭で、~なでしこ達の挑戦~なんて『情熱大陸』みたいに書きました。
この地にやってきた『日本人』という理由で仲良くなった私たちです。
日本に居たなら自然なかたちで友達にはなることはなかったでしょう。

意志の疎通は基本チャットグループで。
便利だけど、文章だけのコミュニケーションには限界も感じました。
この二か月は学びの多い、尊い経験になりました。おそらく携わったひとりひとりがそのように感じたことでしょう。
宣伝をして、外の人を巻き込むということは、内輪で楽しむのと違い、責任も伴います。文化祭のノリだけでできることではありませんでした。

どんなことでも、一緒に取り組める仲間が居てくれることが嬉しい。
私たちはこの地でこれからも支え合って生きる『同士』
大袈裟だけど、日々、やっぱり挑戦だし、

この絆、このなでしこ達には感謝しかない、と思うのです。



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