#214 女の子が強くなったのでなくそもそも強いのだ、きっと


最近、有料の VPN のおかげでこれまで海外から観れなかった映像をNetflixで楽しんでいる。
テラスハウスやあいの里、あいのりという恋愛リアリティー番組が私のぜんぜん知らない間にたくさん存在していた。イギリスにも恋愛リアリティー番組はいろいろあっても、若者の、しかも他人の恋愛には正直、興味もないし感情移入もしにくいと思っていた。イギリスでのいわゆる『肉食系』な恋愛の進み方に情緒を感じなかったのも大きい。
日本のそれはスタジオトークのなかで「男の子が草食系になった」「時代が変わった」と言われるほど興味深かった。

世代でいえば、ねるとん紅鯨団の頃に、出演者たちと同世代だったのが私だ。
あの頃は男の子が女の子に告白をしていた。

私も世代的に、恋愛は男性の告白から始まるのがなんとなく普通のことと思っていたのだろう。だからこそ年に一度のバレンタインデーに女の子が告白できることが特別だったのだ。

最近の恋愛事情はけっこう違った。
好きになった、つき合いたいという告白は女性からでも男性からでもなんら違いがなくなっていた。時代はここまで男女差をなくしてきたか、と実感した。

これらの番組を観ていた私は、カメラを意識しながらの恋愛に「自分は何を見せられているのだろう?」と感じたりもした(実際は勝手に観てるくせに)。けれども、なかなかにキュンキュンもしていたかもしれない。

女の子がきちんと意思をもって、きちんと想いを言葉にして伝えようともがく。その積極性に気持ちよく驚かされていたし、私が若い頃にこんなことできたかな‥‥?と考えてしまった。

ところが、
いや、
もしかしたらあれが私のそれだったかもな、という場面を思い出したのだ。


私が夫と出会ったのは、今も住んでいるこの町だ。
すぐ横が海という海岸道路の反対側は切り立った崖。そこになだらかな歩道橋がジグザグになるようにつけられ、Rock Walk と呼ばれる。ここ数年で綺麗に整備されたが、33年前は手すりが木製という情緒もあった。
そのRock Walk で私は彼にあることを訊いたのだ。
もっと言えば、『問いただした』のだと思う。

春が来れば私は日本に帰るよね。それから二人はどうなるのかな?


彼は『今』を楽しんでいただけだった。
『今』を大切にしていて、正直、数か月先のことまでは考えていなかったと言った。

私はきっと「ハアァァァ~❔」とブチギレたのだと思う‥‥控えめに言って。
未来を考えていない間柄なら不毛だ、幸せであればあるほど自分が傷つくではないか。
「先がないのなら、今もいらない」
そう感じたままを口にした。あなたがこの先のことを考えられないというなら、たった今付き合いを解消しようと‥‥


その頃なぜだか興味のない男性達から求愛されることが続いていた。『よく知りもしない相手』が明確に意思を伝えてくれた。なのに、唯一大好きな、この煮え切らない恋人に愕然とする‥‥

その日はきっと黙って歩いて帰ったと思う。
私たちは同居(フラットシェア)していたから、きっと一緒に歩いて帰ったと思うのに、もうが強かった、そして泣いて訴えたあの光景しか思い出せない。


結論から言おう。

あの日があって夫との今日があり、私から『問いただされた』ことで、彼も私の本気度を知ったのだ。
そして私が留学を終えてイギリスを去るまでに、彼は仕事を辞めて日本で働くことを決めていた。


時代が変わって男の子が軟弱になったわけでもないのだと思う。
女の子のほうが実は『腹が据わっている』のは昔からきっとそうだった。
おとこ「らしさ」とかおんな「らしさ」が放つ既成概念。そんなのはもうほんとに要らない。
玉砕覚悟で、今言わなきゃいけないことを言える勇気。それをやり切った清々しさ。結果の良し悪しに関わらず、彼らの悔いのない笑顔に画面越しに胸が熱くなる。受け止める側の姿勢も問われている、そんな気がした。

恋は落ちるもの‥‥ だから「今からつき合いましょう」なんて確認しなかったよなぁ。『言葉にして伝える』って勇気要るんだぁ‥‥
リアリティー番組を他人事ひとごとのように観ていたけれど、
あーーー
そっかぁ、私も本気で「ぶつかった」日、あったよな‥‥と、そんなことを思い出した話。


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