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ケチャップ王国の小説を話ごとに俳句で表現する。

ちまちまと書いていた俳句がようやくまとまったため、簡単に紹介していきます。夜中に俳句を考えるものだから、想像力が高まったことで夢を見る頻度が上がり、ハチに刺されたり、中学時代の彼女(七夕でデートをして、バスケットボールのストラップをもらったという。今はどうしているのかわからない)とイチャイチャしたりしました。睡眠の質が明らかに下がったため、寝る前に俳句を考えないほうが体には良さそうです。

ケチャップ王国の作品はこちら。

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梅雨から
水溜まり車が混むは家の前

虎と未理の家は相向かい。文中では表現がないものの、家が想染の裏道にあるために、車がいつも橋で渋滞している。車の隙間からちらりと、彼女の視線が送られてくる。

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俺も出かけるんだった
雨蛙父を偲ぶか亡き後を

雨蛙が鳴いている。まるで父親を偲んでいるかのように、悲しく、そして騒がしく鳴いている。

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きっかけ
夏空や銭湯入れば長話

ちなみにスーパー銭湯ではなく、ごくごく普通の銭湯であるため、露天風呂はなく、季語である夏空は見えなかったりする。それでも夏空と言ったほうがいいじゃんか。

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雰囲気
荒くれの学徒盛夏で黙り込む

あまりに暑くて、教師を茶化す不良どもは黙り込んでいる。寝ているなり、机に突っ伏すなりしている。

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夜の雨
橋の上相合い傘で迫る距離

橋の上では歩道が狭まり、相合い傘をすることで、さらに距離が近くなる。恋人と相合い傘だなんて、羨ましいものだな。

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雨は染み込む
怒鳴り声蝉も喚くわ雨降るわ

未理が雨に濡れたことで怒られているのが聞こえる。雨が降っているときは蝉はあまり鳴かないわけだが、これも雰囲気として感じ取れればいいかもしれない。嫌なことがあると、どうでもいい問題まで引っ張ってしまう。

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梅雨晴れ
にじむ汗課題忘れて黙秘かな

虎の友人が課題を忘れて黙りこくっている。怒られないように気を張り巡らせているためか、暑い教室でより汗をかいているわけだ。

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ターゲット攻略作戦
夏の夕恋をついばむ刺客たち

虎の友人が邪魔をすると、未理との距離を近づけることができない。お互いに学校では距離を離している。恋愛話が学校に広まると、だいたい面倒なことになる。

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見舞い
さくらんぼ見舞いのはずが共に食べ

見舞いで渡すはずのものを、一緒に食べようと言われてしまい、それを断るわけにもいかず、虎と未理はさくらんぼを一緒に食べる。小学生だった頃はもっと頻繁に虎と接することがあったが、高校生にもなれば、たとえ近所であっても人間関係が疎遠になるというものだ。さくらんぼが虎と未理の関係を繋ぎ止めてくれた。

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あぁ勉強
夏風呂で鼓動波打ち君想う

未理の視点。風呂場でじっとしていても、心臓の鼓動が湯船の水面を波立たせてしまい、完全に水面が落ち着くことはない。それは生きているという証である。心臓の位置、つまり胸の位置と水面が同じくらいという視覚的にエロティックなシーンでもある。テスト勉強と意気込みながらも、風呂に入ってじっとして、心を落ち着けたら、今度は虎さんのことを考えてしまう。そういう恋模様。

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Electronic Connect
梅雨空をトランシーバー恋つなぐ

仲が親密になってきたとはいえ、安々と家にお邪魔するわけにはいかないし、電話をするのも違う。そういうこともあって、トランシーバーで会話をするという、ちょっとしたマニアックな展開もケチャップ王国の特徴ではある。トランシーバーはPTT「Push To Talk」であり、電話とは違い、同時に話をすることはできず、一方が話すときは、もう一方が聞くというスタイルになる。

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優等生
汗みどろ文武両道恋無学

汗をかくほどに勤勉で文武両道であっても、恋までも優秀というわけではない。仮に恋愛を学んだとしても、それが実践で通用するとは限らない。

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テスト
静寂や解答用紙に垂れる汗

テストの終盤、皆がペンを置いて、時間がすぎるのを待っている。暑さで解答用紙に汗が垂れ落ちる。そして紙に垂れ落ちた汗は、染み付いてしまい、拭き取っても目立ってしまうものだ。

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返却
無頓着テスト返れば夏臨む

テストの結果はどうだっていい。テストが終わった後に待ち構える夏こそが本命であるということ。

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カフェ「どんふぇ」
夏盛りわがご褒美と喫茶店

テストが終わって、なにかご褒美が欲しいと思ったときに喫茶店がある。ここはリッチに、パンケーキでも頼んでみたいなんて。

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夏の始まり 未理は……
暑き日を冷やす誠意のお詫びなり

未理が虎との距離を置いたことに対する謝罪。勉強や学校での噂話を避けたいがために距離を置いていたわけだが、虎は嫌われたと勘違いをして、体調を崩すことが多かった。虎はオタクで性的なことに興味がある割には、一途で相手を強く想っている性格だ。いいパパになれる。

132b
夏の始まり 虎は……
暑き日に光る自販機反射箱

太陽がカンカン照りになれば、自販機が反射して光って見える、はず。実際に見たわけではない。

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橋での約束
家帰り照らすは梅雨の夕暮れよ

家に帰って窓を開けると、梅雨の夕暮れが部屋を照らし、湿気を帯びた風が部屋をまとう。そばに想染川が流れ、想染湖も見えるとなれば、それは幻想的な光景に見えることだろう。

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銭湯でのこと
夏の夜コーヒー牛乳湯けむりと

温泉といえばやはりコーヒー牛乳。(糖分お化けであり、毎日飲むものではない)場所によっては脱衣所で売られているところもあり、湯けむりというより、男臭さを浴びながらコーヒー牛乳を飲むことになる。火照った体によく染み渡る。

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悲劇のデート 1
朝焼けのカーテン越しに肌と影

虎が未理の生着替えを自室から見るというシーン。カーテン越しに薄らと見える肌とそれにかかる影が絶妙なエロスを実現している。光が照明光ではなく自然光であることもポイント。ときにグラビア撮影の技術がアダルト撮影の技術を上回ることがあるが、それは際どさを追求するための構図と温かみのある自然光があるためである。(あとは胸を強調するポージングはグラビアのほうが多かったりするわけで)

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悲劇のデート 2
夏の風噂渡るは回覧板

回覧板をきっかけとして、地域の話題が回っていくというもの。田舎だからこその光景である。

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懐かしき感覚
背伸びしたアイスコーヒー口合わず

そもそもコーヒーが飲めなかった。ちなみに筆者はカフェイン過敏であるため、コーヒーはもちろん、エナジードリンクや緑茶も厳しかったりする。

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創造に導かれ
溺れ死に百日草も立ち枯れる

現実世界で虎と未理は溺死する。名前からして強そうな百日草であっても、ときに立ち枯れることもある。

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大自然
目を覚まし滝の瀑声轟けり

滝の流れる音で目を覚ます。瀑声ともなれば、立派な滝であることが想像つく。虎と未理は溺れたわけだが、現実世界に目の前にあるような滝は川に存在しないため、自分の居場所が把握できない状態。転生ものって、転生したキャラクターはすぐ転生したってわかるよね。なんでなん?(ラノベをまったく読まない筆者のイメージ)

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新たな現実
夏空で肌と肌とが交われり

今思うと肌をキーワードにすることが多い。実際、転生してからは全裸の状態であるため、否応なしに意識せざるを得ない状況となっている。これを書いていた頃はちょうど成人を迎えたわけで、エロスへの追求がえげつなかったのだと思う。読み返していて恥ずかしくなる。

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ヒトの気配
夏の森肌を包める物はなし

服がないのだから、森を探しても、なかなか肌を隠せるものは見当たらない。葉っぱはあっても、それではどこぞのコントを彷彿とさせてしまう。物理的に付けられるものではないだろうし。

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おじさん
夏草や自然と混ざる小屋の壁

小屋の壁が自然と同化している。木造といっても外壁は植物の侵食を防ぐためにコーディングしているものだが、古い木造建築になると、木材がそのまま使われている。そのため、小屋の周囲の手入れを怠ると、木材が植物によって侵食されていく。あくまでイメージであるがそういうものだろう。

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誘導
夏の夜乗るはちゃぶ台危機迫る

虎とおじさん(山田五郎というが、アド街に登場する山田五郎さんではない。そうなったら話がめちゃくちゃになる。同姓同名の別人と考えてもらいたい。昔はその辺りの検索を怠っていたからなあ、今もだけど)が一触即発の危機に陥り、未理がちゃぶ台に乗って仲裁に入る。本来乗るものではないちゃぶ台に乗るということは、危機的状況だったのだろうと推察できる。

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川下り
冷え心地夏の渓流足で浴び

夏でも冷たい渓流を足で浴びる。カップルで川に足をつけるなんてエモいですなあ。(足湯のような状況であっても、こう、生足を拝めるわけだ。混浴で入る温泉だとどこか意識してしまうだろうけど、足だけならばあまり意識しなくて済む。周りに人がいなくて、かつ距離が近ければ、足同士がくっついたり、絡まったりするという動作があってもグー。あの状況は服を着ているのだっけか。筆者からすると、全裸のイメージが強すぎて、どこに行っても全裸なのではないかと考えてしまう)前に登場した滝から流れている水であるため、水の勢いは強く、しっかりと腰を安定させないと、そのまま足を持っていかれてしまう。現実世界では転生できたものの、ここで死ぬと本当に終わってしまうため、用心しなければならない。

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社会問題
夏の山裸足で下るけもの道

アスファルトのような舗装路でないにしても、山道を裸足で下っていくのは骨が折れる。草履は奈良時代からあるとされているように、靴というのは我々が生きていく上で欠かせない装飾品のひとつだと実感する。(サバイバルや無人島をテーマとした番組であっても、基本は靴ありきである。タレントを起用している限りは危害がはってはならず、安全を考慮しなければならないものだ。そういう意味ではぬるい。海外でディレクターがアマゾンで毒アリに襲われたり、精神崩壊しているドキュメンタリー番組もあるくらいだから。それでも靴は履いているのだ)実際に、足の裏から出血していたりと、そういう生々しい表現も作中には見受けられる。

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バランス
伝いたる汗の川筋ふくらはぎ

エロティック俳句。汗や肌は自然を意識する上で表現しやすい。裏を返せばそのくらいしか語彙がないということになる。大人になるとなかなか俳句のようなシーンは見受けられないが、部活動をやっていた頃は、ふくらはぎに汗の通った跡が浮かび上がっていたものだ。kk152では、虎が未理のふくらはぎを触るという、膝の裏やへそを舐めるほどではないが、なかなかに攻めたことをやってのけている。

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集落
夏の山柵で囲った村ひとつ

裏篭村の外観を表現している。害獣を寄せ付けないように大きな丸太がびっしりと詰まって立っている。耐久性能を考えればコンクリートなどあっただろうが、山奥ということもあり、そこら中に生えている木を伐採したほうが早いのだろう。五郎おじさん宅のほうが山奥なのに様式が新しいという不思議。

154
邪神
割れ鏡少女に化けた赤楝蛇

赤楝蛇(ヤマカガシ)は山に生息している毒蛇。自分から攻撃することはないが、毒性はマムシを上回るとされる。村を牛耳る少女、雨葉の性格がまるで赤楝蛇みたいだなあということでまとめている句。

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冷遇
嬌声や雲間に見える夏夜月

ケチャップ王国、今まで18禁じゃなかったのかというくらいには、ところどころで性的な表現が散りばめられている。とりあえずエロとグロをぶっこんでおけばいいという短絡的な発想。ここでは、未理が村の男どもに犯されて、虎は疲労によりトイレで夜を越すという絶望感のあるシーン。実は、裏篭村はブラック企業や労働をメタファーとしている。また、虎の「トイレにこもる」という行為は、筆者の実体験を元にしている。妙にリアルで重苦しい雰囲気なのは裏の背景や体験が埋め込まれているからだ。

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病患小屋
夏の昼蒸れた股汗指拭い

直接的な表現を避けた言葉による戯れ。病患小屋は、病気になった人々を閉じ込める牢屋であり、飯が提供されるだけの隔離病棟みたいなものだ。病院もなければ医者もいない、そうせざるを得ないとしても、未理に性的暴行を加えて、病患小屋に打ち込むという悪行はなかなか陰湿である。これを書いていた頃は筆者も仕事が辞めたいと病んでいたのかもしれない。でないとあんなものは書けない。

高温多湿の小屋の中、クーラーなんてものはなく、苔むした木目に横たわり、ひたすら死を待つのみ。基本的に病患小屋に入ってしまうと出られることはほとんどない。そんな折、未理は虎に捧げるはずのヴァージンを奪われたというショックが強く、虎と同じく意識が朦朧としていた。(虎は一途だが、未理も一途な性格)血と汗、それから体を洗っていないということで粘性のある体液も混ざり、異臭を放っていたそれを手で拭い、小屋の床に擦り付けた。そうなれば、巌二村長の父、巌蔵が黙ってはいない。

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好機
夏の村刃物構える決死隊

村人は雨葉に洗脳されているため(暦子を除く)、バンザイ特攻を決め込むかのように、虎と未理を排除しようとする。堪ったものではない。

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衝突
魂送り落馬せしめる狩猟銃

洗脳された剛太を倒すシーン。洗練されたシーンであるため、夏という安直な表現をしたくなかった。そこで魂送りという精霊送りの別名を季語にすることで、夏を表現しながらも、魂を送りつける、すなわち倒すという表現にしたかった。落馬と狩猟銃という言葉で修飾しておけば、本編を読まなくても理解できるはず。

162
火蓋
夏深し死闘を語る採石場

巌二村長と雨葉が待ち構えていた採石場。まさに死闘であった。未理は雨葉の治癒がなければ亡くなっていたかもしれない。虎も狩猟銃で村長の目を貫通させたのも見事だった。魔法や神力の影響を受けて強化されていたとしても、ある意味奇跡だけで生き延びたといえよう。

163
ロップスの探索
川土手に秋風そよぎ黄昏れる

未理が後遺症なしで無事に完治する。その頃には夏から秋の移ろいを見せていた。川土手を眺めれば、日照りは以前よりも和らぎ、風は熱を帯びてはいなかった。雨葉の今後に不安を寄せつつ、裏篭村での悲劇を生き抜いたふたりの姿は、現実世界で虚無に生きてきたときよりも勇ましかった。

俳句を書き終えて。

疲れた。

だって、説明文まで書くとは思わなかったもの。俳句だけ書いていたら、やっぱり読んでいない方々からすれば理解できない俳句も多いわけで。

41句もよく考えたなあと。すぐに思いついたものもあれば、最後まで作るのに苦労したものもある。後者はカフェ、川下り系、決死隊の句。(ちょうど内容の薄いシーン、山場でも何でもないシーンの俳句を作るのは難しい)前者はエロい句。嬌声と股汗はすぐに思いついた。イメージしやすいし、何より書いていて楽しい。まあ、そういうものだろう。セクシャル・クレイブも性的表現があるからこそ書けたのであって。(グラマーのテーマだけであれだけ書くのはきつい)

今後、本編を書き進めるたびに俳句を考えていきたいと思うくらいには、いい具合に仕上げることができた。

まあ、本編を書き進めるとは言ってないけどね。

就労移行支援が始まってしまったこともあって、創作の時間はだいぶ減ると思われる。まさに前回考えた詩のようになる。

In my free time, just somehow.
for whom? for me.


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