粉飾。




見ない方がいいと思います。
普通に閲覧注意です。
心当たりのある方は、教えてくれると助かります。
でも多分、彼にとっては迷惑だと思うので、見つからない方が幸せかな、と思います。
では、フィクションということで。








人を、探しています。



 あの人が居なくなってからもう3年以上が経つ。中1のあの頃に比べればずっと忙しくなって、しばらく、ぽっかりと穴を開けたように忘れてしまっていた。次思い出せるのがいつかも分からないので、今のうちに記憶を残しておこうと思う。

 彼──通話の声なんて忘れてしまったから、彼なのか、彼女なのかもう分からないけれど、たしか彼だったと思う──と出会ったのは、2021年の夏。
 少しづつハマりはじめていた艦これ、それのなりきりチャットに入った時に会うことができた。当時の私のなりきりキャラは電だったから、神戸かわさきに私が電の衣装を着て行ったのも、もしかしたら偶然ではなかったのかもしれない。
 閑話休題。
 とにかく、そこで私は、「吹雪」に出会った。

 しばらくロルを重ねて、私は彼の回すロルが好きになった。等身大で、明るくて、真っ直ぐで。そして底を覆っている暗さは、すぐに私の目指すべき目標になった。
 それから、LINEを交換した。個チャに通話、それから他のなりきりチャットの人とのグループ。交換したおかげでコミュニケーション手段が広がった。そして何より、LINEアカウントは電話番号につき1つ。チャットを退会すれば切れる関係性と違って、LINEアカウントを残していく限りずっと続くはずの交流に、私は嬉しかった。
 しばらくなりきりが続いた。吹雪から投げかけられるかわいいという言葉は、「電」に対して投げ掛けられていたのに違いないのだけれど、私はその事実に気づかない振りをした。

 一学期期末考査があった。結局成績は中の下くらいだったけれど、試験対策に夏期課題にと忙しくなって、私はなりきりから離れていた。
 個チャやグループで交流は続いた。与えられたかわいいという評価を壊したくなくて、私はなりきりチャットと同じくらい、それかそれ以上になりきった。
 彼は優しかった。等身大で明るくて真っ直ぐでそして仄かに暗かった。他愛もない話をした。個チャでなりきりに興じることもあった。彼はことあるごとに私を褒めてくれた。
 ある日、グループで通話をした。初めての通話だった。彼は恥ずかしがってあまり喋らなかったけれど、同じくほんの少ししか喋らなかった私の声をかわいいと言ってくれた。まぎれもなく私に向けられた「かわいい」だった。
 今にして思えば、彼もなりきりをしていたのかもしれないけれど、第一私が素を見せていないのだから追求しても仕方の無いことである。
 しばらく交流は続いた。彼はことある事に私にかわいいと言ってくれるようになった。ネット上だけでの交流だったけれども、私は彼のことが好きだった。私にとって吹雪ちゃんは、彼でもあった。
 彼は、Twitterで絵をあげていらっしゃるある方の「吹雪くん」シリーズが好きだった。今思い出したので、構成はぐちゃぐちゃだが忘れないようにここに書いておこうと思う。

 ある日──突然、と言うには予兆もあったのだが──彼のアカウントが消えた。
 私は、ずっと繋がっていられるだろうと無意識のうちに思っていたので、驚いたし、悲しかった。でもすぐに、別のアカウントで「吹雪主です」とメッセージが来た。そこで私は、グループの他の人への連絡を伝えられた。
 しばらく、私を介してのそういったやり取りが続いた。彼は相変わらず、私を褒めた。
 そして、また彼のアカウントが消えた。前後がどんなものだったか、もう覚えてはいない。機種変更前に彼との交流は途絶えてしまったから、今の端末には「Unknown」と化した彼とのメッセージは一通も残っていない。
 LINEタイムラインと言うサービスがあった。今は名前を変えて動画メインのサービスとして残っている。そこには、彼とのやり取りが残っていた。それを最近見つけて、そして今これを書いている。私の投稿につけられたメッセージ。私はそれを全部記録に残して、そしてタイムラインに公開されていたその履歴を他人から全て見られないようにした。

 彼が居なくなってからもう3年以上が経つ。彼は元気にしているだろうか。
 一つ願い事が叶うのならば、ひょっとすると私は彼の行方を知る事を願うかもしれない。
 あの日、「大人になったら読んで見てくださいね」と勧められたノゲノラの感想を、私はまだあの人に伝えられない。
 もし再会できたなら、私の性癖を歪ませておいて逃げるなんて狡いですよと小言を言ってやりたい気分である。なりきりを辞めてしまった私も、彼は褒めてくれるだろうか。

 何処に居ますか。

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