【映画レビュー】『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』:二人で街を歩くことは最高に楽しい
気の合う人と散歩をするのは、本当に素敵なこと。
それが、友人でも、恋人でも、家族でもいい。
話をしたいなと思う人、話を聞きたいなと思う人と肩を並べて、気を遣わずに散歩している時間が、人生で一番幸せな時間かもしれない。
この映画を観て改めてそう思った…
朝までしかいられない…というロマンチックな舞台
同じ列車に乗ってたまたま出会った、アメリカの青年ジェシーと、フランス人女性のセリーヌ。
二人は、客席で会話を交わすうちに、意気投合し、ウィーンで途中下車して一緒に時間を過ごすことになる。
ジェシーは、「嫌になったら途中で消えてくれていいから」と、セリーヌを誘う。セリーヌはその誘いを受けて、一緒に街を歩くことにしたのだ。
ただし、ジェシーは翌日の朝には飛行機に乗ってアメリカに帰ることになっている。だから、最初から、一緒にいるのは明日の朝までと限られている。
時間が限られているというシチュエーション。これがとてもロマンチックな舞台となる。
お互いの気持ちを探り合うもどかしさ
二人が最初から、惹かれ合っていることはなんとなくわかる。
ただ、そのことをちゃんと確かめ合えてはいない。今日1日限りの親密さなのか、それとも、ずっとパートナーになれる関係なのか……、手探りするように時間を過ごす。
レコード店の視聴室で、二人の目線が合ったり合わなかったりするシーンは、ドキドキした。男が女を見つめたとき、女は男を見ておらず、女が男を見つめたら、男が目をそらす…
どこまで意図的なのか偶然なのか、その微妙な感じが、もどかしくて、お互い惹かれ合いながらも、相手の心に踏み込み切れない二人の様子がすごくよく表れていた。
観覧車の中のシーンも素敵だった…
残り時間が少なくなっていくと…
やがて、だんだん残り時間が少なくなっていき、もう少ししか一緒にいられないと感じるたびに、二人の心は急き立てられ、切なくなったりする。
でも、とにかく一緒にいる時間がとても楽しく、それだけで十分と思っているようにも見える。こんな人と出会えて、時間を過ごせただけでもよかったと、あきらめかけているようにも見えた。
そんな二人が、最後に本当の心の内を明かしたのは、本当に別れる直前であった。
再会の約束をした二人がどうなったのか、とても気になる。
というか、再会するまで、手紙も電話も必要ないと二人が言いきったところが、すがすがしかった。いまならSNSですぐにつながってしまうけど、そんなの必要ないという意志の強さが、とてもロマンチックだ。
気の向くままに二人で街を歩くのが好き
それにしても、行き先もやることも決めず、ただ気の向くままに一緒に街を歩ける人がいるのは、なんと素敵なことか。
どこかに行きたいとか、何かをしたいということが目的ではなく、二人でいろんな話をすること、時間を共有すること自体が目的だから、それが一番楽しいのである。
この映画でも、二人が楽しく話したり、歩いたりするシーンが一番好きだ。映画の世界に嫉妬したくなるほど素敵だった。
自分自身にも少し重なる体験がある。映画のようにロマンチックでもないし美しくもないが、それが思い出されて、いいなあと思うと同時に、少し切なくなった。うらやましい。
主役二人の魅力があふれる映画
イーサン・ホークが魅力的だ。ちょっとチャラい感じもするが、繊細で、実は真面目そうで、ちょっと子供っぽくて。
ジュリー・デルピーも、知的でクールでありながら、開放的で情熱を秘めているように感じさせ、とても美しかった。
二人の魅力が画面にあふれる作品である。というか、ほとんどこの二人しか出てこない、二人だけのロマンチックな世界だった。
ずっと観たいと思っていながら、ずるずる機会を逸してきた作品でした。
SNSで、「七夕に観るとよい映画」として紹介して下さっているのを拝見し、ようやく観ることができました。
まさに七夕映画かもしれません!
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