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i-woolでホームスパンのマントを!プロジェクトは、夏からはじまった。

2020年12月18日、19日の2日間。盛岡市中ノ橋通にある「岩手銀行赤レンガ館」にて、ホームスパンやお菓子、小物、雑貨を販売するクリスマスマーケットが行われました。来訪者たちを迎えるドアマンが纏うのは、手つむぎ手織りのホームスパンで織り上げたオリジナルのマント。まるで英国紳士のような装いです。

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 2020年12月、明治期に建造された「赤レンガ館」にて初めて開かれた「クリスマスマーケット」。

以前からホームスパン の作り手さん達と雑談のなかで「赤レンガ館の入り口でホームスパンのマントを着たドアマンがサッと招き入れたらかっこいいよね」なんて話していたのですが……。2020年夏、マノルダいわてさんとまちの編集室にて、コロナ禍の経済循環を目的にした盛岡市助成金を活用し、赤レンガ館のクリスマスマーケットを企画。それに合わせて、イベントがいっそう盛り上がり、服地としてのホームスパンにもまちの人が興味を持つきっかけになれば!と、マント制作のプロジェクトが始まりました。記録も兼ねて、その過程をざっと紹介しておきます。

ホームスパン生地 を担当したのは、盛岡市の「mää-mää homespun(めーめーホームスパン)」の木村加容子さんと木村つぐみさん。「みちのくあかね会」で技術を学んだ2 人の作家による、工房を持たない(各自の自宅で作業)分業体制の手紡ぎ・手織りのホームスパンブランドで、それぞれ担当があります。■木村加容子 羊毛選定・洗毛・染色・紡ぎ 担当■木村つぐみ デザイン・織り・仕上げ・製品管理 担当。ちなみに、共に姓は木村ですが、親族・親戚関係ではありません。

まずはどんなデザインがいいのか?赤レンガ館のイメージは?男性が羽織っても違和感なく、動きを妨げないフォルムは?着丈は?色は?これを決めるまで、実はかなり時間がかかったのです。「柄ものではなく、シンプルな無地もいいのでは?」「いやいや、写真映えしないでしょ」とか、「チェックは可愛くなりすぎる可能性もあるよね」とか。さまざまな織り見本を並べ、生地のサンプル制作を重ねる一方、別生地でマントのデザイン決めも並行して行います。

縫製担当は、花巻市に拠点を構える「ASSOBOO(アッソブウー) 」というブランドを運営する北湯口 心さん。普段から、洋服・アクセサリー、小物などをデザイン制作していますが、ホームスパンのコートも縫製経験があり、「ASSOBOO」の名のとおり「遊ぶ」と言う意味を込めた新しいスタイル、アイテムづくりに力を入れています。

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2020年夏、いったん別布で制作した試作をもとに、全身のデザインを吟味。モデルは、身長のあるまち編Kさんです。一方で、柄はチェックに絞り込み、その色合いなども詰めていきました。皆で悩み、男性向けなのでグリーンがいいのではとも思いつつ、赤レンガ館のイメージに合わせた赤を軸に、黒、クリーム色の3色でオリジナルチェック柄をつくることに。


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写真はサンプルで織ったもの。チェック柄の大きさ、縦横に入るクリーム糸の太さや本数、赤と黒のバランス、織り方を平織りにするのか綾織りにするのか、悩むポイントは本当に多い!見本を何度かつくりながら、微調整を繰り返しました。

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さて、素材に使うのはもちろん岩手県産羊毛i-wool(アイウール )です。今回使ったi-woolは一関下大桑の羊毛。下大桑の生産者さんは農作業が忙しいなか、いつも様々な取り組みに協力してくれるありがたいパートナーです。新しいことに向かう際は、軽やかに動く人の連鎖が物事をスムーズに転がしていく気がします。

柄をどうするかが決まって初めて、糸の全体量が決まり、どの糸をどれだけ染めるかが決まるわけですから、夏から秋にかけて、つむぎ担当の木村加容子 さんは大忙し。暑さのなか、毛を洗い、ゴミをとって、染めて、紡いで(実際はもっと繊細な工程が詰まっています)、もうほんとにお疲れ様です!

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10月中旬、やっと糸が完成!糸の総量およそ2.5キロ。羊毛洗いから始まって、概ね2か月。「次の工程に渡すことを考え、出来るだけ作業時間を確保できるように」と加容子さんは超特急の前倒しで仕上げたようです。


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紡いだ糸を、デザイン組織に沿って織り上げるのは、木村つぐみさん。普段はマフラーや大判のストールなどが多く、服地をつくるのはオーダーがあってこその仕事。いやあ、全長7メートル50センチに及ぶ布を織る達成感ってどんなでしょう?

11月下旬、織り上げた後は、縮絨をしてスチームアイロンをかけて、アイウール マント用服地の完成です!(こちらも、そう簡単な流れではないですが)

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3色のバランス、絶妙です!黒と赤が馴染みつつもクリーム糸が全体をほどよく締め、きっぱりとしたチェック柄が出来上がってます。赤と一言で言っても、染める段階で何色にも染めた羊毛を混ぜ合わせて一つの「赤い糸」になっていくので、面に仕上がった時の奥深さ、存在感がたまりません。その作業を羊毛選びの段階から仕上げまで、ある意味自分がコントロールしながらつくり上げていくのは、手つむぎ手織りのホームスパンをつくる醍醐味の一つなのかもしれませんね(作り手ではないですが)。

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そして、仕上がった服地は、「ASSOBOO(アッソブウー) 」さんへ。最後のアンカーとしては時間的にはタイトなスケジュールでしたが、北湯口さんとは事前に打ち合わせと試作を重ねていたこともあり、スムーズに進行。12月上旬にサッと仮縫い!肩部分や後ろ見頃のチェック柄あわせの調整もぴったりです。実際に動いてみて、肩から背中へのラインなどを確認。ドアマンのおじさまもかなりモチベーション上がってました。

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そして、12月18日朝、イベント開催に合わせて、出来上がったマントに黒い帽子をかぶると、キリッとした紳士に!イベント開催日からクリスマスまでの期間はこの姿で、来場者を迎えてくれました。

夏から続いた2020年のアイウール「マントプロジェクト」!プロならではの技術力と経験、チーム力で無事完成です。地元にいる羊から羊毛をいただき、染めて紡いで織り上げて生まれた布は力強くてしなやかで、たとえようのない生命力が宿っているような気がします。

今年の冬、盛岡を訪ねた折は、皆さんもぜひ赤レンガ館のマントを着たドアマンと写真を撮ってみてください。冬の装いとして使われるホームスパン、今回は男性用でしたが女の子向けや着物用マントも良さそうですね。

各製作者、それぞれ制作風景・工程など SNS にて紹介していますので、こちらもどうぞ!

●mää-mää homespun
instagram https://www.instagram.com/maamaa.homespun.morioka/
Facebook https://www.facebook.com/kim.maamaa

●ASSOBOO(アッソブウー)
 instagram https://www.instagram.com/assoboo555/


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