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ray

金木犀の香りが

一度途絶え

身体いっぱいに

あの甘い空気を吸い込めるのは

来年になるのかと

少し寂しさを感じていた。

しかし

不安定な気候の中

出遅れた子達がいたのか

同じ公園の同じ場所

厳密には違う木々から

あの甘い香りが漂ってきた。

彼女をそこへ案内したように

また同じ場所へ彼女を案内する。

夕方のもうこれ以上明るくはならない

徐々に陽が沈んでいく時間帯

甘い香りが少し冷たい風に乗って

2人の間を通り過ぎていく

過ぎていく風と香りの中で戯れる

愛おしくて

心地の良い時間

幸せの

答えの一つだったように感じた。


彼女が花の香りを吸い込もうと

顔を近づけた途端

朝日のような光が

彼女の顔に差し込んだ。

彼女は相変わらず

人の次元を自然に飛び越えてしまう

根源的な

美しい自然の現象

いつかは風

あの日は

黎明の象徴

あちら側の世界に希望があるのなら

彼女の存在は

彼女が起こす現象は

希望そのもので

それは遠くにあるのではなく

僕と彼女の中に内包されているもの

希望は1番近いところにある。


香りの中を抜けた後も

金木犀の香りが残っていた

彼女が付けている香水の香りが

金木犀としてデザインされた香りよりも

限りなく金木犀の香りに近いものだった。

何故今まで気がつかなかったのか

その香りは彼女との親和性が高い

彼女そのものでもある

僕はその香りがとても好き

香水とカフェラテの香りを

知っているのは僕だけの

特権であってほしい。




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