帰路2

午前の巡回を済ませた2人は駅前のラーメン屋の前でじゃんけんをしていた。

「先輩〜〜いくらお金無いからって、普通後輩に奢らせます〜〜?」
「うるせぇ!こっちは命がかかってんだ!さっさとケリつけるぞ!」
「全くしょうがないですね〜〜こんな事引き受けてくれる後輩なんていないですよ〜〜?感謝してくだい〜〜」
「「じゃーんけーん」」
「...うぐっ...てめぇ瑠璃川...念力使うんじゃねぇ...」
「なんのことですか〜〜?言いがかりはやめてください〜〜負け惜しみするなんてかっこ悪いですよ〜〜?」
「ああもう奢ってやらァ!」
「わ〜〜い先輩ダイスキ〜〜らめんめ〜〜」

ひとしきり騒いだ2人は店へと入っていく。
店内は狭いL字になっており、全てカウンター席。内側には手ぬぐいを頭に巻いた店主と、座って少し背伸びをすると左向こうの客の顔が見える高さだ。

「おやっさん、いつもので。コイツのは普通ので。」
「あ〜〜先輩何勝手に決めてるんですか〜〜!瑠璃川まだ選んでるのに〜〜」
「不正したくせに選べると思うなボケ。奢ってもらえるだけありがたいと思え。」
「え〜〜〜〜〜ならせめて先輩のと同じのがいいです〜〜」
「あ?お前じゃ食えねぇからやめとけ。」
「瑠璃川こう見えても結構食べるんですよ〜〜?ナメないでください〜〜」
「無理無理、初心者が出張るな。それに残したらおやっさんに申し訳ねぇだろ。」
「ぶ〜〜ケチ臭い先輩ですね〜〜」
「お待ち。普通のといつもの。」
「サンキュー!うまそー!」
「.........。」
「どうした瑠璃川?食わねぇならそっちも食っちまうぞ?」
「いや、こっちのは別にいいんですけど、ソレほんとにいつも食べてるんですか...?」
「ん?ああ、このくらいがちょうど良くてな〜うまそうだろ?」
「は、はい...そ、そうですね...ハハ...(何あの量!!やっぱこの人バカなんじゃないの????頼まなくてよかった〜〜〜〜〜〜)」

程なくして食べ終えた2人が席を立とうとした時、入口からスーツ姿の3人組が入ってきた。何気なくその内の1人に目をやった瑠璃川が固まる。

「...あれ?...先輩?」
「あ?なんだよまだ食い足りねぇのか?」
「いや、そうじゃなくて、先輩って兄弟いましたっけ?」
「いねーよ、てか知ってんだろそんな事。」
「じゃあ今入ってきた人達は...?」

そう言われて瑠璃川が指をさした方向に目を向けると、そこには3人の内1人、ガメザと瓜二つの人物がこちらを見ていた。体毛が少し逆立つ。

「...瑠璃川、先に庁舎戻ってろ。」
「え?突然すぎて意味わかんないんですけど〜〜?」
「いいからさっさと行けっつってんだ。2度も言わせるな。」
「...わかりました。」

今までおちょくっては怒られての繰り返しをしてきたが、聞いた事のない強い口調に、ただ静かに返事をするしかなかった。

「先輩、何かあったらすぐ連絡して下さいね?」
「いらねぇ心配なんかすんな、早く行け。」

対峙した2人を脇目に店を出たところで、感じたことのない不安を覚え、足早に庁舎へと戻って行った。

「おいお前ら、どうせ食わねぇんだろ?ここじゃ場所が悪ぃ、ちょっと付き合えや。」
「...(無言で頷く)」
「ッケ...気色わりぃ...おやっさん、騒がしくしてすまねぇな。今コイツら連れて出て行くからよ。」
「おう、食わねぇならうるせぇからとっとと出ていけ。」
「んじゃ、今日もうまかったぜ。ごちそーさん。」
「また来いよ。」

店主を背に、頭の上でひらひらと右手を振り店を出た。瑠璃川が向かった反対方向へと3人を連れ、少し歩くと少し広めの路地裏へと着いた。すると、振り返りガメザが口を開く。

「一応聞いといてやるが、何の用だ?」
「...。」
「ハァ...大方、俺を連れてこいとかそんなんだろ?まぁタダじゃ連れてって貰えそうに無いけどな。」
「...。(拳を構える)」
「へぇ...オリジナルのこの俺とやり合おうっての?」
「...。」
「ッケ、そういう上からの命令に忠実な人形みたいな所ホント気持ち悪ぃな。」
「...。」
「いいぜ、かかってきな。オメェんとこの"家"のこと洗いざらい聞き出してぶっ殺してやるよ。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?