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ため息俳句 長湯

春長湯窓打つ音や雪時雨ゆきしぐれ  空茶


 若い頃は、烏の行水のようであった。
 温泉に行っても、ゆっくりと湯につかることもなかった。
 それが、年をとってから湯に入っている時間が徐々に長くなって、この頃はうとうと寝込んでしまい、はっとして目覚めるなんていうことも時々ある。
 ひとつ間違えば、溺死なんてことになる、そんなことになったら、恥ずかしくてとても成仏などできない。

 今夜は、遅くには雪に変わるという予報であったが、こう冷え込むとすでにそうなっているかもしれないとの空想の句である。
 「雪時雨」という語は、「雨のことば辞典」(講談社学術文庫)で見かけたことばである。『日本大歳時記』には収録されているとのことだ。時雨がいつの間にか雪交じりとなって、降ったり止んだりするのをいうそうだ。霙のような感じもあるが、「雪時雨」ということばが美しい。

 さて、湯冷めしないうちに寝てしまおうか。