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ため息俳句 鵯(ひよどり)

 山茶花の垣根に毎年やってきていたひよどりが昨年は姿を見せなかった。蜜を吸いにでも来ていたのか、また花弁を咥えているところも見た。
 とにかく一昨年おととしまではこの餌枯れの季節になると毎日やってきた。
 妻は鵯の甲高い鳴き声が好きではないといい、始めはあまり良い顔をしていなかったのだが、毎年やってくるのにつれて、山茶花に混じって植えてある卯木の枯れ枝に食べそこなった林檎やら、食べ残しの食パンやらを刺しておくようになった。
 すると、ガラス越しに見ている我らにすっかり慣れてきて、こちらの視線を懼れもせずに堂々と食べるようになった。そうなると妻は可愛いと思うようになったらしく、餌やりに気を遣うまでになったのだった。
 それが、昨年の冬はぱったりと現れなかったのだ。
 ところが、今朝方、鵯が卯木の枝先に止まって、居間を覗くかのようにしていたのだ。
 その鵯が先の鵯と同一なのかは、本当はわからないのだが、多分あの鵯であろうと思うのだ。鵯は群れているのが普通のように思うが、そやつは単独でやってくるのである。
 気づいた小生は「やあやあ久しぶりじゃないか、一体何処へ行っていたんだい」というような調子で話しかけたところ、鵯はぷいっと飛び立ってしまった。
 それから日中姿を再び見せまいかと気をつけていたが、ついに現れなかった。
 明日の朝は、卯木に萎びた蜜柑などを刺して置こうと思う。あの鵯なら目ざとく見つけてやってくるはずなのだ。
 さあ、ちょっと楽しみだ。


鵯の来れば山茶花明るみぬ