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ため息俳句66 白山吹

庭先に山吹の黄色の花が咲き出すと、春が来たのを気づかされるのであるが、その黄色の山吹に遅れて、白の山吹がぽつりぽつりと開きだす。そうして、今の頃になると白山吹が盛りとなって、黄の方の色は徐々に褪めてくるのだ。
色彩名の「山吹色」は日本の伝統的な色であるそうな。色彩の規格では「あざやかな赤みの黄」である。子供の頃、水色とこの山吹色が好きの色で、クレパスの減りが早かった。それに山吹色とは、黄金色のことであって、大判小判も指した。「花山吹」は襲の式目にあって、表は薄朽葉、裏が黄色。
我が家の黄の山吹は、秩父へ出かけた何かの折、山中の道ばたに咲いていたのを、力ませに数本根っこから引き抜いてきたのが、垣根の一部に定着した野生の花である。
それに対して、白の山吹はどちら様からであったか忘れたが、頂き物である。これも垣根の山茶花が枯れて歯が欠けたような隙間に、植えてみたのが育った。ちなみに白山吹と山吹は、別属であるそうだ。白山吹はほとんどが園芸であるとか。
いづれにしろ、これまで詩歌に詠まれてきたのは、黄の山吹である。山吹は民家の庭や垣根に似合うものだ。花は鮮やかであるのだが、エラそーに自己主張をしていない感じだ。そこがいい。

山吹にぶらりと牛のふぐりかな   小林一茶
山吹やひとへ瞼の木曾女      橋本鶏二

なんて、とっても「山吹」らしい。
そして、白山吹はもっと慎ましい。目立たない、地味である、地味は滋味に通ずるものだ。白山吹も捨てがたく優しげに咲いている。


昼ふかく白山吹や籠もりける


葉隠れの白山吹に母恋し