コロナ禍での同人誌即売会における感染症対策2021

ここでは、感染症対策について同人誌即売会特有のことに軸足を置いて考えたいと思います。即売会を開催することに対するリスクに対して、萎縮するだけでは芸がありません。私達は賢いので。どうすれば、楽しくて生きがいに満ちた学びのある同人誌即売会を、コロナ禍中でも開催することができるのでしょうか。その対策について考えます。 基本的には、国から指定されている適切なワクチン接種に加えて、各種検査の受検、そして感染の可能性や恐れがある場合は適切な静養を取り、様子を見て参加しないことが求められます。

一般参加者の立場からできること

同人誌即売会は、もともと多くの人が高密度に集まることの多いイベントです。1サークルあたり450mm幅に詰め込まれるというブロイラーみたいなブースに、向かう先によっては長蛇の列ができることもある人の列。トイレに行くときでさえ並ぶかも。
とにかく人と近づいてある程度の時間待機を余儀なくされるので(並ばないでも済むような運用をされない限り)、飛沫等を浴びない・浴びても体内に入れないような行動を取る必要があります。これは、並んでいる瞬間だけでなく、その後のタイミングを計って洗浄または手指消毒をすることも含みます。特に食事前と帰宅直後の手洗いなどは、一般参加者に限らずすべての参加者が行うべきであるということは再三いろいろなところで述べられているとおりです。
同人誌即売会では、一般参加者はお客ではなく、基本的に参加者であるとよく言われます。自分で考えて能動的に動くべきであること、と解釈できます。しかし、列がどこにどのようにできるか、などは一般参加者の立場からはまったくわかりません。他の場所との影響や、担当責任者のメンツ、考え抜かれた効率のよい動きなどは一般参加者の立場からは到底預かり知らないところです。
以上のことから、一般参加者の立場からは、どうしても受動的な対応と、感染症に対する曝露対策が中心となることが解ると思います。ここでは受動的という言葉に悪い意味はありません。もっとも人数の多い参加形態が一般参加者であり、この人たちの積極的な協力なしには同人誌即売会は運営不可能です。このことは、コロナ禍とは全く関係なく、過去から連綿と続いている素晴らしい文化だと感じています。
ところで、いろいろなタイミングや要因で列はできますが、並べる場所が少ないとその列の管理責任者は圧縮してでもそのエリア内でなんとか人を並べようとします。はみ出るときははみ出ますが、なんとか避けたいのが本音のところ。コロナ禍前よりは相当、間隔を空けることに慣れては来たものの、それでもある程度の圧縮はあるかもしれません。繰り返しになりますが、飛沫感染に対する防御手段は十分講じておくのが賢い参加者です。

サークル参加者の立場からできること

業界に対して

同人誌即売会は、サークル参加者が本を始めとした頒布物を出さなくては始まりません。これによってジャンル、そして同人誌即売会業界を応援することになります。雰囲気としての応援だけでなく、P8 「4.関連産業」で述べたように、印刷所やそれに付随する業界の経済を回すことにも繋がります。コロナ禍によって青息吐息の企業も多い中ではありますが、それでも現在なんとか維持している印刷業者は大変ありがたい存在です。コストカットにより職人が減っている可能性もありますが、それでも復活してくれさえすれば、まだサークルの頒布物を作ってくれる環境は残ります。それに対し、一度消えてしまった企業の復活には大きなコストがかかります。印刷機やインキなどの設備資源に加え、職人などの人的資源が一度散逸してしまうと、もうもとに戻るのは容易ではありません。また、それまでの注文等を受け入れてきた後釜を据えることにも、時間や金銭、手間など大量のコストが必要です。最悪、そのままない状態のままになってしまうかも。
例えば、コミックマーケットの冊子版カタログは、第1号の創刊以後、C97まで共信印刷株式会社が一貫して製作していました。しかし、残念ながら同社は「弊社事業所撤退及び解散に関するご報告」にあるように、2020年10月中旬に解散の憂き目を見ることになってしまいました。その後の2021年12月のC99A(シン・C99)では、冊子版の発行はないことがコミックマーケット準備会より発表されています。
これらのことから、サークル参加者の立場から業界に対してできることは、利権であろうとなんであろうと自分がお世話になっている業界の維持に様々な対価を払うことではないでしょうか。具体的には、頒布物を完成させ、同人印刷所に商品を発注、入稿することです。
本書も、少ないながらサークル参加の立場から同人印刷所に対しての応援の意味も含めて本を作っている気持ちもあります。いつもありがとう、印刷所の中の方々!

感染症対策として

感染症対策としては、まず自らが感染しないように日常生活という即売会と直接関係のないときも気をつけることに加え、仮に当日調子が悪ければ、本当に残念ではあっても参加を見合わせること。当日運良く参加できるのであれば、防御具をうまく活用すること。これが一番の感染症対策であるとだんだんわかってきました。難しいのは、やりたいこととやらなければいけないことの優先度を付けることですね。だってせっかく新刊刷ったら会場行きたいですし。
あとは、もし待機列ができたときにできる限り早く解消するよう務めることだと思います。考え方に偏りがあることは認めます。列ができることは感染症対策としてはリスクであることはすでに確認したと思います。サークルができる感染症対策としては、ここが最も影響が大きい点だと思います。

スペース内での振る舞い方

自分の周囲の消毒

サークルスペースは、サークル参加者がその会期中に頒布のために借りた場所です。その使用責任があるため、感染症対策として椅子や机の消毒を行う必要があります。
コミケットアピールにも言及があり、「会場内での注意事項」の中に「スペース内の高頻度接触部位 (~中略~) は、こまめに消毒して下さい。」と書いてあります。設営のときに消毒もしているはずではありますが、使用している間に飛沫が飛んできたりいろいろな人との接触があるので、消毒は自ら行う必要があります。自分の身は自分で守る考え方ですね。
現在は、飲食店に限らず、入店時に消毒を求めることは日常となりました。サークルスペースに消毒用アルコール等を設置し、自由に利用できるようにすることも、C99Aでもよく見られる様子になると思います。もちろん、そうしなければいけないという主張ではありませんので、そこはご理解をお願いします。

感染症対策用具の活用


過去、スペース内で気をつけるべきこととしては、運営からの指示を守ることであり、更には周囲に迷惑をかけないことが大きな柱でした。それが現在では更に感染症対策が追加された状態です。そのため、P16 「接触感染の対策」の項で紹介したようなものや行動が求められるようになっています。
消毒用具はともかくとして、自己防衛のためのマスクやフェイスシールド、パーティションを準備することは、多少なりとも期待されているかと思います。もちろん、コレに関しても消毒薬の用意と同様に、そのサークルの輸送力や体力、体質に大きく影響を受けることは忘れてはいけませんが。

スペース内滞在人数の制限

サークルスペースは、即売会の会場のなかでも特に狭い空間です。その中にサークルの人間は数時間も滞在するという密集密接空間。そのリスクを避けるため、感染症対策としてスペース内の滞在人数を制限することは妥当であると考えます。

東京ビッグサイトという大きな会場であっても、基本的に同人誌即売会において1サークルの使えるスペースはとても狭いものです。その幅450mm。この幅に対して、某コミケットであれば椅子が2つ机の上に重ねて用意されていましたが、それを横に並べると、立つことさえ一苦労。前後にするか、一人は後ろで立っていたほうがマシくらいの狭さでした。壁サークルはそれなりに余裕がありましたが。

他のイベントでは、1スペースあたり最初は1脚だけ用意してあり、それでは足りない場合に追加椅子制度により1スペースあたり2脚まで椅子を置くことも可能でした。これは有料無料問わず椅子を貸し付けるものです。1脚だいたい500円から700円くらいをよく見た気がします。前後にならぶサークルはあまり見た記憶がありません。だいたい横に並びたがるような気がします。
机のサイズの例外として、都立産業貿易センターのものは大きさが異なります。いわゆる便利社机が幅1800mm×奥行き450mmであることに対し、ここの机(というか展示台)は幅1800mm×奥行き900mmと2倍の面積を誇ります。その分重いんですけど。余談でした。


現在は、島の中自体広く、机同士の横の間隔も取られているためスペースの余裕を取ることに加え、多くの人が長時間滞在しないことを念頭においた運用に変更されました。そのため、机半分の1スペースあたり椅子が1脚で、過去にはあった追加椅子という制度もなくなっているイベントもあります。これにより、スペース内の滞在人数を減らし、感染リスクを減らすことを狙っているはずです。サークル参加者としてはトイレなどに行きにくい時代となってしまいました。

飲食の制限

飲食中は、飛沫感染症対策の面から考えると特にリスクの大きい行為として有名です。そのため、スペース内などの密集気味のところでは今までできていたことを我慢する努力を求められるようになってしまいました。
飲食中は当然のことながらマスクを外していますし、食べ物自体も空気中に露出しているのでそこらへんに漂っているかもしれない飛沫にはノーガード戦法、食器や缶などの飲み口もフルオープンです。どうみてもリスクにしか見えません。また、ゆっくり食事しながらおしゃべりすることは多くの人が大好きな行動であり、リラックスタイムです。その時くらい好きなように振る舞いたい、という気持ちがあることはよくわかります。それが同人誌即売会という非日常空間であればなおさらです。さらに、過去の会場には、場所によっては飲食を提供するケータリングカーも駆けつけて、会場の人たちにサービスを行っていました。それも今はできなくなってしまい、残念です。
ケータリング(英: catering)とは、飲食業者がキッチンカーなどで会場に出張してきて飲食物を提供することです。会場にこのようなサービスがあると、そこらじゅうで飲食する人が発生して感染リスクが高まってしまいます。
食べ物を買うことができたら、サークル参加者は椅子のある自分のスペースで食べたくなってしまうことも当然の流れです。サークルスペースで、ケータリングで購入してきた熱々のホットドッグを頬張ることは特権階級っぽくて最高の瞬間でした。しかし今は飲食は控えるべきですし、そのような注意が発出されているイベントもあります。大変残念ですが、スペース内での飲食は控えるか、やむを得ない場合は手早く行う必要があります。
コロナ禍の昨今では、ケータリングが減少するか、もしくはまったく用意されないこともありえます。実際にC99Aはケータリングはなく、コンビニでおにぎりや菓子パンを購入するくらいしかできそうもありません。コンビニ飯を食べることは流石に禁じられていないでしょうが、それでもスペース内でカップヌードルカレー味を啜るのは、マナー的にどうかと思います。


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