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さいとうすずこという名の雀の話

ある日の夕方近くに、
とても 鳴いてる雀を ベランダから見つけた。
しかも、飛べてない。

怪我してるのかも、と
すぐに外に出た。
わたしを見つけて ぴょんぴょん跳ねながら 寄ってくる。
この時点で 少しおかしいとは思ったものの…。

(noteにいつか投稿しようと思ってた動画)

思わず 駆け寄って掌に乗せて どこか怪我してないか 見た。

嘴を見て すぐに 掌に乗せたことを後悔した。
 嘴の端っこが黄色い。

雛だ…。

 落ち着いて 周りを見てみると、親らしき雀が 心配するように いつもより高い声でチュンチュン鳴いてる。

 飛ぶ練習していたんだなぁ。

野鳥は 人間の匂いがつくの嫌がる。

悪いことしたなぁ。よく見てなかった。
もう少し 様子みていたら よかった。

 仕方がないので、
元の場所に そっと放した。

そして、こっそり見ていた。

すると、親鳥が飛んできて、
「チュンチュン」鳴いて 誘導している。


ああ、よかった。
ちゃんと面倒見てる。

ごめんね、匂いつけちゃって、と思いながら 暫く見ていた。


あ!… 雛の目の前は 水路…

と思った途端、雛は 水路に落ちた。
すっと わたしの視界から消えた。
親鳥も しきりに首を傾げて 水路を覗いてる。

え?落ちた?
落ちる瞬間を見ていなかったけど 雛はどこにもいないし、

落ちた

そう確信するかしないかの手前で もう わたしは走ってた。

水路横を 目を凝らしながら 小走りで 探すけど どこにいるのかわからない。

もっと先まで 流されたのかな。
とりあえず 速度あげて 少し先まで 走っていって じーっと流れてくる水を見ていた。

あ!いた!流れてくる!

 ジャボっと 水路に入って 流れてくる雛を両手で掬った。

さっき 跳ねてたあの元気な姿ではなかった。
両脚がピーンと伸びきって、両眼も瞑っていた。

 時折、大きく呼吸をしている。

慌てて 一旦 家に連れ帰り、タオルで 水を拭き取った。
拭き取りながら、小鳥を診てくれる動物病院に 連絡。

「野鳥なので、親がまだいるかもしれないから とりあえず 羽根を乾かして、陽の当たるところに 置いといてあげてください。気になるようなら 連れてきてくれてもいいですよ」
と言ってくれた。
心強かったです。

心配ではあるけど、
 親鳥も心配しているだろうな。

 どうなるかはわからないけど やらなきゃいけないことはわかっていた。

まずは 親元へ帰る手伝いをすること。

それがだめだったら そうなった時点で また考えよう。

雛は 目を瞑ったままだったけど
そっと 陽の当たる場所に放すと 両脚で ちゃんと立った。

伸びきってた両脚も ちゃんと力強く立ってる

隠れて 見守ることにした。

そのうち、わたしがいないのを確認したのか、親鳥が やってきた。

雛も 「チュン、チュン」
鳴き始めた。

祈るように見守っていると、
あっという間に 一緒に飛んでいった。


あー、よかったぁ。
ほんとよかったぁ。
 娘に話しながら 泣きそうになってた。

 最初に要らないことしたなぁ、と 反省した。次からは 自然の命を もっと信じよう。



そして、翌朝。早朝。
ベランダが やけにうるさい。

「チュン、チュンチュン!チュン!チュン!」

なになになに?なんなんだ?
ベランダの外 見ると 雀が一羽 けたたましく鳴いている。
しかも こちらにむいて まるで わたしを呼んでいるかのように鳴いている。

子供たちに
「ねぇねぇ、雀がすっごい鳴いて こっち見てる…」

そっと窓開けると ヒュッと 飛んだ。

そして、すぐ隣りの家の屋根に 雀が 3羽いた。
それを なんとなく眺めていた。

昨日の雀親子だったりして、と そんなことあったら 嬉しいな、と想像しながら 眺めていた。

3羽の雀は 屋根の上を ちょんちょんと 動いて 微笑ましかった。
その動画を またなんとなく撮っていた。

 そのうち 雀たちはいなくなったので
わたしも部屋に入った。
動画をゆっくり観てみた。
昨日の雛かどうかはわからない。

だけど 1羽 屋根から でんぐり返しして ころころころ、と転がって 落ちそうな雀がいた。何度も観ていて 気づいた。
見つけた時は 爆笑してしまった。

えー。大丈夫?(笑)

ここで わたしは確信したのだ

けたたましく鳴いてたのは 昨日の雛で、お礼を言いに来てくれたのだな。ふっふっふっ。
可愛いやつ。

屋根から落ちたのは 昨日の雛だな。ふっふっふっ。バレてるよ。可愛いやつ。

 娘が
「んー、、さいとうすずこやね」
と 名付けていた。

その後も 近所で たくさん雀たちは 見かける。
毎回 目が合うと おはよう!って 声掛けてる。
だけど、どの雀がさいとうすずこなのか わかんないよね、と 娘と話すことが いまだにあります。

一昨年のことなので、さいとうすずこは もうおかあさんになってるかな。
(性別までわからないけど。勝手な想像して楽しんでいます)



ヘッダー画像は 違う雀さん。
以前に撮ったものです。


 今日も 命あるもの全てにとって、良き一日となりますように。

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