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Roland Kirk The Inflated Tear (1968)

奇抜な演奏スタイルや楽器、ジャンルにとらわれないスタイルで人気のあるローランドカーク。ジャズだけでなくソウルにも踏み込んだ代表作Volunteered Slavery(1969)の一つ前にリリースされたこのアルバムはスピリチュアルなサウンドやソウルへの接近のない狭い意味でのジャズ(語弊のある言い方だけど上手く言い表せんので許して)をする最後のローランドを捉えた一枚です。

メンバー
ローランドカーク:サックス、フルート、クラリネット、ホイッスル、イングリッシュホルン、フレクサトーン
ロンバートン :ピアノ
スティーヴノヴォセル :ベース
ジミーホップス :ドラムス
ディックグリフィン :トロンボーン(Fly by nightのみ)

The black and crazy blues
悲壮感あるホーンとマーチングドラムが印象的な曲。そこから徐々にはバップ的なリズムへと変わっていきます。ローランドは自分が死ぬ時この曲をかけてほしいと言ったそうです。

A laugh for rory
息子のロリーのために作った曲で冒頭で喋っているのががロリーです。こういったユーモラスで可愛らしい曲を書けるところもローランドカークの良さの一つだと思います。

Many blessings
カークの熱いテナープレイが聴けるハードなグルーヴがかっこいい曲。

Finger in the wind
クラシカルで神秘的なバラードナンバー。後のスピリチュアルジャズにも通じる雰囲気です。

The inflated tear
汽笛のような重く掠れたようなホーンによるテーマが印象的な曲。不思議な音のパーカッションやオルゴールがコラージュのように入れられていて不思議に思っているといきなりカークの叫び声が聴こえたりと映画やドラマの記憶が目まぐるしき現れては消えていくシーンを見ているような気分になります。

Creole love cal
これだけはカバーでオリジナルはデュークエリントンです。ホーン奏者はローランド1人ですがエリントンのグループのホーンアレンジをかなり上手く再現しています。ソロになるとディストーションをかけたギターばりにザラついたサウンドを出したりとカークらしいやりたい放題のスタイルです。

A handful of fives
躍動感あるハードバップ的なリズムに乗せてスウィンギーにアドリブを吹いていく一曲。ここで使われているのがマンゼロです。

Fly by night
全員でアップテンポのリズムに合わせて躍動感ある演奏を繰り広げるスタイルがコルトレーンからの影響を感じる一曲。

Lovellevelliloqui
この曲もコルトレーンっぽい。サウンドが変わってるという点ではコルトレーンもローランドカークも同じですがコルトレーンの方は小難しく考えてその通りに吹く、ローランドは細いことは考えずフィーリングで吹く。そんな印象です。