サムテイラー

 レコ屋の安いコーナーやリサイクルショップのレコード売り場でサックス持ったおっさんの写真にムードテナーとか歌のない歌謡曲とか書かれたジャケットのレコードをレコード集めてる人なら一度は見たことあるはずです。今回はあのおっさんの正体を紹介します

 サムは1916年生まれで大学を卒業後プロに。キャリア初期はビッグバンドを渡り歩きクーティーウィリアムスやキャブキャロウェイの楽団にいたようです。セッションミュージシャンとしても活動し、ブルースブラザーズがカバーしたことで有名なジョーターナーの「シェイク、ラトル&ロール」やドリフターズの「マニーハニー」といった曲に参加していたようです。ただこの頃はまだしっかりクレジットを記録しなかったこともあり正確な記録は不明です。ビッグバンドを渡り歩いた経験やルイジョーダンのバンドにいたことはオリバーネルソンに、セッションミュージシャンとしての経験(しかも代表的なものがアトランティックレコードからのリリース)という部分はキングカーティスに近いものを感じます。

 理由は不明ですが1960年代に入ると日本でムードテナーをやり出します。おそらくロックやR&Bに押されてジャズのマーケットが縮小しそのジャズもフリーやら何やらと過激化していってサムのような楽団を持った娯楽的なスタイルのミュージシャンの仕事が激減したことと関係がありそうですがここら辺は当時の人に聴かないとなんとも言えません。ハーレムノクターンが大ヒット。ディスコビートにアレンジしたハーレムノクターン77なんて曲もあります。その後も演歌やイージーリスニングのムードテナーをたくさんやります。この頃はジャズに興味がなくなったのか日本に住んでいたのか分かりませんがアメリカの会社からのアメリカで売れそうなレコードは出ていません。ムードテナーで順調にキャリアを築きムードテナーの帝王と呼ばれるまでに。1990年に74歳で亡くなりました。

ともあれ聴いてみました。まずはムードテナーから

…なんというかくどいです。いわゆるむせぶようと言われるサックスの音がくどい。ホンカーと言われる人はバラードでこういった演奏をしますがたまにやるからいいんだと思いますね。ムーディだけど何曲も聴いているとくどくなってくるというとバリーホワイトの語りにも通ずるものがあります。

ジャズやってるやつです。カウントベイシーをもっとイージーにした感じでアップテンポやミディアムテンポはご機嫌にバラードはブルージーかつレイジーでかなりおすすめです。 

ルイジョーダンのバンド時代の演奏。テナーは2人いるのでサムテイラーかは分かりにくいですがもう一人はバリトンも吹いているのでバリトンが聞こえる曲はサムがテナーを吹いているはず。荒々しく最高に楽しいサックスを吹いています。特にカレドニアのソロを聴かないのは損!ロックンロール、R&B、ジャズ、ブルース、ラテンとノレルならばなんでもやろうぜって演奏は飛び抜けて楽しいです。ルイに限らずジャンプはロックやR&Bを先取りしたような曲が多いうえにジャズ界の大物もここからキャリアを始めた人が多いのでいずれか紹介したいですね。

セッションミュージシャンとして

コーラスの一員のようなイントロから始まりしゃしゃらないけど曲にアクセントをつけていて印象に残る演奏はさすがですね。聴くならここらへんですね。ただこういった後出しのクレジットはどこまで信用していいのか疑問です。

いろいろ聴いた感想ですがスムースジャズのバッキングがデジタルでジャズ感がなかったり選曲がAORやソウルのカバーという部分とジャズ感の薄いムードテナーのモロ演歌なバッキングや選曲と通ずるものを感じました。なので早すぎた和風スムースジャズって言えなくもないかなと。(彼のプレイはスムースと言うには暑苦しすぎますが)余談ですが知名度もレコードを見つける頻度もサムテイラーほどではないですがシルオースティンという人もいます。次はこの人も紹介するかもしれません。