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Miles Davis - Jack Johnson (1970)

発掘音源も含めるととんでもない数のアルバムがリリースされているエレクトリックマイルスですが僕が好きなアルバムを選ぶとIn A Silent Way(1969), On The Corner(1972)そして本作です。ソリッドなファンクビートはもちろん、白いタンクトップを着て仰け反りながらトランペットを吹くマイルスの姿を使ったジャケットも最高にかっこいいです。本作は黒人プロボクサーであるジャックジョンソンを主人公にした映画のサントラとして作られたという経緯があります。確かにリズムセクションのパンチの強さはステップを踏みつつジャブを放つボクサーのようでもあります。

メンバー
マイルスデイヴィス:トランペット
スティーブグロスマン:ソプラノサックス
ジョンマクラフリン:ギター
ハービーハンコック:オルガン
マイケルヘンダーソン:ベース
ビリーコブハム:ドラム

メンバー(ウィリーネルソン)
ベニーモウピン:バスクラリネット
ソニーシャーロック:ギター
チックコリア:エレピ
デイブホランド:ベース
ジャックディジョネット:ドラム

テオマセロ:プロデュース

Right Off
ビリーコブハムとマイケルヘンダーソンによる超重量級のファンクビートをバックに1番手のジョンマクラフリンのロック風のギターソロをとります。2番手はマイルス。ジョンは後ろでファンキーなリズムギターを弾きつつ時々ロック風のトーンで合いの手を入れています。途中ジョンがワウをオンにするとかなりねちっこくファンキーなプレイに変わります。ワウを使ったジョンのギタープレイは大好きですがソロではどちらかと言うとファズのような音を激しく歪ませるプレイが多いのがもったいない気がします。ジョンのギターが途切れるとマイルスの怪しげなミュートトランペットとおそらくオルガンを使った隙間風のような不気味な音が流れます。しばらくするとジョンがスティーブグロスマンを連れて戻ってきてすぐにスティーブのソロが始まります。途中スティーブとマイケルのデュオになりますがそこでマイケルのソリッドで重たいベースラインがじっくり聴けます。そしてドラムが戻るとハービーのオルガンソロにバトンタッチ。壊れているのか?というくらい歪んだ音でハービーもキレてるのか?っていうくらいフリーキーかつ攻撃的な演奏です。もう一度ジョンのソロに戻りますがジョンのプレイよりバックのハービーのスペイシーなオルガンの方が個人的にはかっこよくて好きです。ここのギターフレーズはビリーコブハムのアルバム「スペクトラム」でのトミーボーリンのようなフレーズがあります。もしかしたらトミーはこのアルバムを参考にしたのかもしれません。そのままマイルスのソロへとバトンタッチしますが早めに切り上げてハービーとジョンの掛け合いが始まります。どちらもえげつないくらい音を歪ませています。2人の作るノイズギリギリのサウンドのまま曲は終わります。

Yesternow
こちらもマイケルの重量ベースは変わりませんがアンビエント的なギターやトランペットの音から始まります。特にRight Offでは自分がリーダーにも関わらず出番がほとんどなかったマイルスがソロを多くとっています。続くジョンのソロもワウをかけてタメを聴かせた一曲目の過激さが嘘のような演奏です。続くハービーもロングトーンを活かしたアンビエントっぽいサウンドです。しかしスティーブのソロになるとバッキングに躍動感がでてきます。ここら辺で別日に録音されたWillie Nelsonが挟まれています。Bitches Brewのような浮遊感のあるオルガンを軸にホーンやエレピが回るサウンドが展開されます。ここでノイジーなギターを弾くのはソニーシャーロック。ノイズ発生器と化していてさすがのエレクトリックマイルスでもこれは過激すぎます。いつYesternowに戻ったのかいまいちわからないままナレーションが入り終わります。ナレーションは映画のサントラですが深みにのある音や若干エコーがかかり音割れしているところがサウンドとの違和感がなくめちゃくちゃかっこいいです。