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深淵

中央線の車内。スマホを見ていた顔をふと上げると、目の前にブラックホールがあった。それはストライプのシャツと白いパンツの隙間からこちらの機嫌を伺うように覗いていた。魅惑の深淵へ続くその小さな穴は私の内なる衝動を掻き立てる。下手な飾りは必要ない。漆黒の洞穴は存在しているだけで美なのである。一度足を踏み入れると二度と戻れない。だがそれでいい。

美しくも危うさ満点のそれに吸い込まれそうになりながらも、ふと思う。この持ち主はどういうツラをしているのか。本来はしてはならぬ想起である。ある時、美はその存在だけを評価しなければならない。例えばその歌が脱帽の美しさである場合、声の持ち主も魅力的な美しさを持つのではないかと期待してしまう。しかしそれは悪質な期待に過ぎず、実際が思惑と乖離していた場合、元の歌声自体にも失望してしまう可能性は有り得る。だが、仮に持ち主自体に美が無くとも成立する程、この漆黒の深淵はそれ自体が美しい。

だから、視線を移し、彼女の顔を覗き込んだとして何も変わらないはずである。そう思い、顔を上げた。

なるほど。そもそもの美貌が腹部にも滲み出ていたらしい。

結果に納得した後、SerieBの順位表を眺める。
こちらの深淵から脱出したのはParmaとComo。
これから昇格プレーオフを戦うSampdoriaのDarboeを個人的には応援したい。MilaneseのAscoliは更なる深淵に沈むようだ。

SerieAも残り3節。Forza Roma Sempre。

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