『限りある時間の使い方』を読んで
『限りある時間の使い方』 Four Thousand Weeks - Time Management for Mortals - オリバー・バークマン著を読んだ。
キャッチーなタイトルと全米での輝かしい書評を見て購入決定。
実際に購入したのは数ヶ月前。おそらく2022年の終わりごろだったんじゃないか。
これは、巷にあふれる時間管理術のコンセプトとは視点が異なる。「時間を支配するものは人生を支配する」とよく耳にする。が、そもそも時間は支配できるものなのだろうか? 人生は思いどおりにコントロールできるものなのだろうか?答えはNoであることをみんな知っている。
なのに、時間は有限。有効に使え!と脅迫されているかのような毎日。To Do Listを完全につぶせないと幸せにはなれないのか? そんなことはない。それよりも、心が時間に追い立てられて余裕がなくなっている状態ーそれが、大切なことを見えなくして、感じられなくしている。つまり、気づけない。
大切なことは、To Do Listの全制覇を目指すのではなく、優先順位をつけて、大切なものから取り組み、下位は削除してしまうこと。時間は有限なのだ。現実は思いどおりにならないということを謙虚な気持ちで理解したとき、現実のさまざまな制約は、いつの間にか苦にならなくなっている。禅の思想そのものだ。今を生きること。「自分は今ここにいる」ということに気づくこと。現実をただ静かに受け入れること。よくある時間管理術にはないアプローチだ。
本書の中にとても印象的なフレーズがあった。ちょっと長いが、引用したい。
同じ波に乗る人でも、心のありようで、身体が得るものはずいぶん違うようだ。サーフィンのテクニックはその中のひとつ。たとえ技術的に下手くそでも、この人にとっては何ものにも変えがたい豊かな時間になっているはずだ。自分が心から楽しんでいると感じられる時間なら、感性が冴えわたって、実にさまざまな情報が身体から入ってくる。その尊さをしっかりと認識して時間を使うのが、最高の時間管理術というわけだ。
このように、よくある時間管理術とはまったく違う視点の、洞察に満ちた本だが、断定口調だったり押し付けがましいところがない。時間に対する観念に、禅だったりマインドフルネスの視点が含まれていることが、日本人にとって親しみやすいこともあるかもしれない。
この本、日本語がとても滑らかで読みやすかった。最近、太文字や色文字、改行の多用でわかりやすく、視覚的なインパクトを狙った文章が多いが、それが効果的なのはパワポの世界だと思うのだ。読ませる文章なら、やり過ぎは逆効果と思うのは私だけだろうか。ここのところ、この「やり過ぎ」系の本を立て続けに読んだので、この本は楽に、気持ちよく読み進めることができた。翻訳も読みやすかった。
最後に。私が読んだ本の写真をタイトルに入れて、Amazonのリンクを貼った。この写真、本の帯のキャッチコピーが違うのに気づかれただろうか。私は、自分の本の「時間と戦っても勝ち目はない」という一文にとても違和感を覚えた。そんな挑発的なことは言ってないだろう。ちょっと煽りすぎじゃないの? 「人生は4000週間 あなたらなどう過ごすか?」の方が内容にマッチする気がするのですが。。。どっちが評判いいんだろう、それも気になる。
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