「北欧の神秘」感想


『北欧の神秘』展に行ってきた。

最近はもっぱらフランスの印象派などの展覧会ばかり行っていたので、
北欧を舞台とした今回の展示は新鮮で面白かった。

とりあえず忘れないうちに感想をメモしておこうと思う。

素晴らしい花と少年達


今回特に印象に残っているのがこの「素晴らしい花」という作品。


絵のタッチはあまり好みではないのだけれど、
テーマとしている内容が興味深い。

この作品では、立派に育つ白い花に対して
その生き生きと成長する姿を眺め楽しんでいる貧しい少年と
その花を持ち帰り花瓶に生けようとする裕福な少年の対照的な行動が描かれている。


花そのもののが自然に生きる素晴らしさを楽しむ貧乏な少年は
「どうしてそんなことをするんだろう」
と裕福な少年に対して批判的な思考を持っているかもしれないし、

(あるいは表情だけを見ると
裕福な少年が何をしようとしているかさえ理解しておらず、
ただ目の前の花の素晴らしさだけを感じているのかもしれない)

裕福な少年は
「綺麗だから飾ろう」と考えているか、
あるいは短絡的な思考に留まらず、そこから発展して
「このままだと枯れてしまうから、家に生けた後に綺麗な状態のまま加工しよう」
と考えているかもしれない。

決してどちらが良いか悪いかということはなく、
生きてきた環境によって各自形成される価値観は異なり、
同じものに対してもそれぞれ異なった感じ方や行動をするという多様な考え方の肯定、
あるいは皮肉を示唆しているのだと私は解釈した。

シンプルな絵ではあるが、
そこから感じるメッセージ性が私の感覚を刺激した一枚だった。


北欧の物語を描く

北欧の絵画はRPGゲームを感じさせるような冒険譚のような絵画が多く、
様々なストーリーと触れ合うことができ
心がワクワクとさせられた。


こちらはアスケラッドが姫を救うまでの冒険が描かれた作品。

トロルとお姫様の絵などはまさに
RPGやファンタジー小説などに出てくるような「囚われの姫」を感じる一枚で、少年心がワクワクさせられる。


また闇の中で目を光らせる得体の知れない恐ろしさを感じるオオカミと対峙するアスケラッドの絵画では、
その緊迫感が伝わってきて思わず冷や汗が垂れそうな感覚になる。


風景画や象徴的な絵画、肖像画などでは感じられない少年心をくすぶられるような、
心の奥のワクワクが引き出されるようなこうした北欧の物語性のある絵画は、
見ていて純粋な面白さを感じた。



北欧の壮大な風景


写真撮影禁止のエリアだったため残せないのがもどかしくはあるが、
北欧の壮大さと自然の力強さ、偉大さを感じられる数々の風景画達には圧倒された。


絵を描く画家達の心情は様々だが
工業化や都市化が進む中で、それとは対照的な「北欧の自然の素晴らしさ」が前面に出された風景画は、画家達の無言の主張を感じる。


工業の発展によってもたらされたものは今の私達の生活を大きく支えている一方で、
それによって失われた、忘れられた自然もあるのだろうと、どこか切なくもどかしく感じた。


他にも色々感じたことはあるものの、今スラスラと文章化できる感想はこのくらいなので、
ここで一旦感想を締めようと思う。


余談だが、
以前ゴッホアライブに行った時に映像で見たゴッホのひまわりを生で観られたのも個人的には良かった。
ただこうしたひまわりのようなまだ明るくあるゴッホの作品を観ると、
この先のゴッホの人生が思い出されて胸が苦しなってしまうのだが。



終わり。


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