【シロクマ文芸部】冬の海岸~彼女の場合
振り返ると、海岸沿いのリゾートホテルの入口の灯りが目に眩しい。まだ夜の明けきらぬうちに私は一人でホテルを出てきた。冬の明け方はより一層寒くて、ブルっと身震いしながら入口に待機していたタクシーに乗った。
あの人はまだ眠っているだろうか。それとも、寝たふりをして私が一人出ていくのを見ていたのだろうか。まあ、そんな事はどっちでもいい。私はあの人と別れて一人に戻ったというだけの話だ。
あの人は年齢よりも若々しく、どこか少年っぽさの残る人だ。最近、私から離れたがっている様子を