【短編小説】我願意
二人は決して結ばれてはいけない
人の身ではない私はあなたを思うことも
許されない…
それは、痛いほどわかっている
そのアヤカシの姫は
静かな夜の柔らかな風に吹かれながら
その夜出会った青年のことを
思い出していた
切なくて苦しくなる心
恋など出来る身ではない
だが、自分の想いに抗うことができない
本当に忘れなくては…いけない?
ただ一人想うだけなら、罪にはなるまい
姫は静かに目を閉じた
あなたのためなら
あなたのためなら
私はすべてを捨ててもかまわない
アヤカシの掟もこの城を守る事も
何もかも忘れて私は自分の心のままに
いたい
千年に一度、たった一度の恋だもの
どうか赦してほしい
真心で始めた恋なのだから
ただあなたの胸の中にいたい
たとえ世界(すべて)を失うことに
なったとしても
静かな城の静かな夜の風の中で
叶わぬ想いに身を焦がす
姫は静かに想い人の名をつぶやいた
⊹ ࣪˖ ┈┈ ˖ ࣪⊹ ┈┈⊹ ࣪˖ ┈┈˖ ࣪⊹
この作品は
フェイ•ウォンの「我願意(私の願い)」
という曲から着想しました。
書いているうちに頭の中で泉鏡花の「天守物語」がクロスオーバー
和洋折衷な作品になりました。
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