![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144055364/rectangle_large_type_2_7087bdcf173a836080b8dfd230421c5f.png?width=800)
ゆのみ#【キラさん(上)】
数年前の7月に
私は68歳の男性、キラさんと出会いました。
定年後に函館市に近い渡島管内に住宅を購入し、四国からご夫婦で移られてきました。
ご夫婦で愛車に乗り、北海道各地を旅行して回ったそうです。
数年後、奥様が難病で半身不随になり、車椅子生活になりました。
キラさんは介護に奮闘する中で、ご自身も肺がんになり、私に連絡してきた時にはステージ4になっていました。
「僕は長く生きられない。
亡くなったら体の不自由な妻が一人残されてしまう。今のうちに夫婦二人で介護施設に移って妻が困らないようにしておきたい。」と話しました。
介護施設に入るには、身元保証人が必要です。
身内も子供もいないキラさん夫婦にとって難しいことでした。
そこで、行政書士に後見人になってもらい、介護施設に入所しようとしたのですが、契約の段階で行政書士がいなくなったそうです。
入退院を繰り返していたキラさんは、どうしていいか分からず、私のホームページを見て連絡してきたのでした。
苫小牧市内のホテルのラウンジで初めて会ったキラさんは、丸坊主の頭に帽子をかぶり、ニコニコと笑っていました。
鹿部町から愛車を飛ばして苫小牧まで来たと言い、少し話すと小さく息を吐き、下を向く姿はどこか痛々しく感じました。
「僕の命は1年もないと思う。死ぬ前に、なんとか妻の家を見つけてあげたい。じゃないと、死ねない。」と言われたので、
まず函館市内で夫婦部屋がある介護施設を探しましたが、空きがありません。
入居できるなら苫小牧でも札幌でもいいということになりましたが、
当時、苫小牧の施設に空きはなく、苫小牧にはキラさんが望むがん治療をしている病院もなかったので、札幌の施設に引っ越すことを決めました。
札幌に馴染みが薄い私よりは、札幌に詳しい行政書士にキラさんの後見人と介護施設の手配をお願いしました。
施設が決まれば、即、家を売り、引っ越す予定でした。
(下)に続く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?