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奈良に行くなら[18]〜薬師寺編

天武天皇の発願によって創建された薬師寺。西の京エリアに広い伽藍を持つ、南都七大寺のひとつに挙げられるお寺です。ご本尊の薬師如来坐像はじめ、立ち姿の美しい日光・月光菩薩立像、仏足石、四神(青龍・朱雀・白虎・玄武)が描かれた白鳳時代の台座など見どころはたくさんありますが、個人的に薬師寺さんといえばやはりふたつの塔。中央の金堂を挟み、東西に二基の塔を配する伽藍配置は、ここが日本初だったそうです。

過去を語る西塔と未来を語る東塔

下のリンクはJR東海さんのキャンペーンポスターですが、この
「古きは、未来を語る。」
「新しきは、過去を語る。」
というコピーがとても好きでした。もうまさに!という感じで。

JR東海 うましうるわし奈良

創建当初から残る国宝の東塔。対して西塔は1981 年に再建されたものですが、その鮮やかな青丹の色と金色の飾り金具に彩られた外観は、創建当時を再現した姿。両方の塔があることで、1300年の歴史の重みを感じながら、奈良時代の人々が目にしていたその当時の雰囲気をも味わうことができるのです。

現存する平城京最古の建造物とされる東塔は、これまでも何度か修理が行われています。その中でも平成の修理は、創建以来最も大規模な全面解体修理ということで、2009年から長期間に渡り、塔全体がすっぽりと素屋根に覆われていました。全面解体ともなるとそりゃ時間かかりますわな〜とその覆屋を見上げること度々…12年に及んだ解体修理を終えて、やっとお目見え。おぉ!いよいよですか〜。待ってたよ〜!落慶法要行きたいな〜なんて思っていた矢先のコロナ禍でした。1年近く公開が延期になりましたが、2021年3月、やっとのことで一般公開へ。初層が特別開扉され、内部の心柱や天井画も見ることができました。
建立当時の技術力の高さには驚くばかりですが、修復の歴史や資料を振り返ると、各時代で多くの人の手によって守り続けられてきた足跡を垣間見ることができ、こうしてまたその姿を見られる喜びも増しますよね。

↓保存修理現場見学会に参加された方のレポート。とても興味深いです。

国宝薬師寺東塔保存修理事業にともなう発掘調査記者発表資料

修復後の初訪問となった2021年12月。私にはどうしてもやってみたかったことがありました。それはふたつの塔の真ん中に立って空を見上げること。天を仰ぐと視界の右端と左端、ギリギリのところに両塔の先端を捉えることができるのです。レンズ越しでは限界がありますが、肉眼だとキレイに見えます。これ、お寺の方に教わったのですが「今度行ったら絶対やろ!」とずっと思ってまして。ナイスビューでした!(この日はお天気もよく碧空♪)

左が西塔、右が東塔。カメラではこれが限界…

雨を司る水神さま

さて。個人的な注目ポイントをもうひとつ。その東塔の奥にある龍王社です。毎年7月26日に五穀豊穣をお祈りする龍王祭が行われますが、この日はかなりの高確率で雨が降るのだとか。農耕に不可欠な降雨が順調にもたらされるよう祈念するお祭り故の恵みの雨でしょうかね。
そして逆に「この日は雨を降らさないで〜」も。お天気にまつわるお願い事を叶えてくれる…ことが多い神様だそうですよ。

薬師寺周辺地域の水神として尊崇された龍王社

風の路

「時を往来する、白鳳の想い。」これもJR東海さんのコピーなのですが。私にとっては偶然なのか、訪れるとなぜかいつもやわらかな風が吹く場所。過去からの風と未来を知る風が、その時代の人々の想いを風に乗せて。ここで交差して吹き抜けていくような。そんな印象を受けるのです。
1300年前から人々が大切に守り続けてきた祈りに想いを馳せることで、未来に受け継ぐことに繋がれば…。果たして千年の先にはどんな時代が、どんな未来が待っているのでしょう? そこはいったいどんな世界になっているのでしょうね? また千年後ぐらいにここに戻って来てみたいものです。

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