金木犀

秋の入り口で迷う
「ここだよ」
と言っているような
無邪気なオレンジ色の賑わいは
芳醇であるのに控えめな趣

金木犀の曲がり角で
小さな影が伸びたり縮んだりしているのは誰
夕暮れの隠れんぼ
見つからないの

あれからどのくらいの時間
探していたのでしょう
水を含んだような空に
金色の秒針が細く浮かんでいる
時刻を合わせるように鋭く光る
山の方から夜風が吹くから
急に寂しくなった

「ここだよ」
と言っているような
金木犀の
てのひらでオレンジ色の粒がはじけて
じわあっとあったかくなるような
そんな香りの中にいる

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