“雨の街を”とキンプリと                   そして“東風破”


#スキな3曲を熱く語る #ユーミン #キンプリ #Jay Chou 

音楽には全然詳しくない。ずっと日本を離れていたのでJ-POPにも、何にも詳しくない。ただここ数年ネットで色んな音楽が聴けるようになって、気軽に音楽を楽しめるようになった気がする。最近聞いた曲で心が少し前を向けた曲がある。それは自分が道に迷っていたもしくは迷っている時に聴いた曲、なぜか突然思い出したように聴いてみたらあの日のことが蘇ってくる。たぶん、年を重ねたいまの自分も、あの頃のように迷っているからなのだと思う。

一曲目は荒井由実の「雨の街を」。いまから40年近くも前になるのか、まだ自分が中学生だった頃。本当にこれからどうしていけばいいのかわからなくて。自分が何者なのか何が出来るのか本当にわからなくて、将来が見えなかった、でも毎日はやって来て、学校に行って勉強して、でも私は何なの、の繰り返し。そうした頃によくユーミンを聴いていた。特に荒井由実時代の音楽が心に響き。雨の日に窓を開けて空を見上げたあの日、「雨の街を」の歌詞のように、「夜明けの雨はミルク色 静かな街に ささやきながら」妖精が降りてきて、道を示してくれればいいな、と思ったし、「夜明けの空はブドウ色 街の灯りをひとつひとつ消してゆく魔法使いよ」で魔法が解けて夜が明けていく様子、少しずつ今日が始まっていくような怖いような気持ちになり、でも「誰かやさしく私の肩を抱いてくれたら、どこまでも遠いところへ歩いていけそう」な気持ちになった。もちろんそんな「誰か」はその当時、おらず。でも、いまも、これからも、こんな雨の街を私はひとりで歩いて行くんだろうな、と思えた、心がなぜかすっくと決まった、前を向いて雨の中を歩いて行こうと思えた歌でもあった。

荒井由実「雨の街を」:YouTubeで荒い画像ながらも、当時の瑞々しい才能あふれるユーミンがピアノを弾きながら歌う映像を見つけた。心打たれるものがある。

二曲目は、台湾の歌手周傑倫(Jay Chou)「東風破」。中国でなら誰もが耳にしたことのある中国的なノスタルジックさを持つ名曲。個人的な感じ方かもしれないが、中国の戦前からいまに続く壮絶な歩みを感じさせる世界観が背景にあるように思う。でも歌詞にはそんなことは書かれておらず、時が流れていくさま、切なく哀しい旋律と心に響く中国語詞が心を打つ。時は流れていくけれど、それでもあなたを思って私は生きるというような。

誰在用琵琶彈奏 一曲東風破
楓葉將故事染色 結局我看透
籬笆外的古道 我牽著你走過
荒煙蔓草的年頭 就連分手都很沉默

私はもともと京都生まれ大阪育ち、歴史好きの父の影響もあり、家にあった歴史小説を読んだり、奈良や京都のお寺をめぐったりに興味があった。中学から高校にかけて、世の無常に興味を持つようになる。国語の授業で読んだ「平家物語」の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり」にひかれ、木原敏江さんの漫画『夢の碑』の『桜の森の桜の闇』『とりかへばや異聞』から平安時代の華麗さと対をなす闇や鬼にひかれ、西行の「願わくは 花の下にて 春死なん その如月の 望月の頃」のように思ったり。それが、NHK人形劇「三国志」にはまり(森本レオさん演じる孔明にしびれた!)、やがて中国へと興味を持つようになった。中国といってもはまったのは、吉田日出子さんの舞台「上海バンスキング」の劇中にでてくるジャズと戦前の上海だった。吉田さんの舞台は見ていないのに、なぜそのサントラを手にしたのかは記憶にないが、戦前の上海の躍動感と忍び寄る戦争の影のコントラストがよかった。それから私の人生を決めたといっても過言ではない山口淑子・藤原作弥著『李香蘭 私の半生』に出会う。戦前の中国と日本の壮絶な歴史に打ちのめされたと同時に、その壮絶な時代を懸命に生きてきた山口淑子さんの生き方に圧倒された。それからというもの、山口さんや周璇など戦前上海の歌壇や映画界で活躍した歌手たちの音楽、「蘇州夜曲」など戦前の音楽を聴いたりして、ますます戦前の中国に興味を持ち、大学で中国語を勉強して、中国に行こう、と決意をした。そして北京に住んで20数年、多くの中国の歌を聴いてきた。Jayも他にもたくさんの名曲があり、私も他にもたくさん好きな曲がある。だがその中でも中国的な切なさを感じさせる旋律を現代の楽曲にしたJayのこの「東風破」が一番の名曲に思う。

三曲目はKing & Prince「You are my hero」。キラキラアイドルとして人気の彼らだけれど、大変な努力と犠牲を払い迷いながらも懸命に進んでいる彼らの姿に私も励まされている。

画面はとてもキラキラなんだけど、ちょっと皆悩んでる?って思ってしまったキンプリの新曲。特に廉くん。デビューして3年、ライブや個々のドラマ出演などがあり飛躍の年となったと思うのだけど、人気が出ると心無い言葉を投げかける人も嫌なことも心が折れることもたくさんあるだろうなと推察する。この「You are my hero」はファンを励ます曲なんだろうけど、自分たち自身も励まされて、負けないで、歩んでほしいと切に願う。

「雨の街を」を聴きながら、見えない未来におびえていた私も、中国語を習得して長年北京に住んで働いてきた。でもそれって何なんだろう、めぐりめぐって結局私って…?これからは正直死へと向かうだけ。あと一体何ができるんだとまた昔の私に戻ってきてしまい、ならばもう一度大学に戻って勉強することにしたのが数年前。ようやく論文の形が見えてきた。いまは北京のとある大学で日本語を教えながら、清末・明治初期の中国語研究の論文を書く日々が続いている。気分転換に、あまり重くない曲が聴きたいと探していた時に出会ったのがKing & Princeの「L&」というアルバムだった。歌詞の世界観もよかったし、何より5人ともが歌もダンスも上手くて正直びっくり!それからキンプリ沼にはまるという…。北京にいても、VPNを使えばYoutubeも見れるし、中国の動画サイトにもたくさんの動画がUPされており、バラエティーでの映像や、関西ジャニーズJrだった頃の廉くんや紫耀くんの映像まで見ることができ、論文を書くのに疲れた時にはずーっとキンプリの動画を見て癒されている。だからこそ、負けないでほしいと強く願う。こんなに若い時から色々なことを犠牲にして頑張ってきて、つらいことも乗り越えてようやくいまがある。でもこのいまさえ、努力なしには飛躍どころか維持することすらできない厳しい現実。それはたぶん、見ている私自身がその現実の苦しさを重ねてしまうから、応援してしまうんだろうな。大変な世の中だけど、みんなに幸あれと強く願ってしまうキンプリの「You are my hero」なのだった。







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