一時の漂泊


2021年6月5日9時59分、20秒、21秒、22秒



私はあまりにも譲りすぎた。

散歩、読書、午後のお茶、ピアノ、旅、食事、睡眠、夜更かし、

おしゃべり、外で飲むお酒、空…

どれも、時間を忘れてすることが出来ない。

時間に囚われては、満足にできないことばかりなのに。

この街で生きる私を縛るのは、時間だ。


夜勤明けのこの私と、

隣の部屋のつい1年ほど前に生を受けたばかりの赤ちゃんと、

ベランダの下の小道を歩くおじいさんは、、

今、真に平等なはずだ。

同じとき、同じ場所に、確かに平等なのである。

この3人で何かできるかなあ、なんて考える。

赤ちゃんに会話は無理だ。

おじいさんと、赤ちゃんとするようにただ見つめ合ってニッコリとは、過ごしにくい。

考えがとまったところ、

何かがすっと、空を横切った。

尾先の白く、長い鳥。

見事に、小道の一本の木の枝にとまり、しきりに葉を揺らす。

あ、そうか。

この鳥を、おじいさんは下から眩しそうに見やり、

隣の部屋の赤ちゃんは「ああ~」と発声し、指さす!

3人の視線が今、一点に、一羽の鳥に集まって、

こんなに美しいことはない…そして、鳥はただ生きるために木の実を啄む。


今は、何もせず、

ただこの世界を見ていたい。




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