部屋は歩くことの出来る立体的彫刻。グレゴール・シュナイダー
ドイツ人アーティスト、グレゴール・シュナイダーの個展『SUPPE AUSLÖFFELN けりを付ける(スープを飲み干す)』を観に行ってきた。
グレゴール・シュナイダーという人物
1969年、ドイツ生まれ。
構成主義的建築彫刻とインスタレーションを用いた作品づくりで知られるドイツ人アーティスト。
構成主義とは…鉄やガラスなど工業的要素を使用して抽象的構成を目ざす1910年にロシアで始まった芸術運動。
インスタレーションとは…空間全体を作品としてその場で体験させる1970年代に一般化した表現手法。
彼の作品は政治的な性質を持つことから、しばしば論争になることもある。
生まれ育ったドイツの炭鉱の町
シュナイダーが生まれ育ったのは、ドイツのLiethという炭鉱の町。
この町には失業者が多く、空き家がたくさんあるような町で、シュナイダーにとっては町全体がアトリエであり、制作の場だった。
採掘の為に巨大な機会が町を掘り起こしており、この環境がシュナイダーの最初の作品であり、生涯をかけて作り続けるであろう作品「家ur 1985 today」の制作のきっかけとなる。
シュナイダーの主な代表作
・『家 ur 1985 today』部屋の中に全く同じ部屋を複製した作品。
・『Toter Raum,Tokio 2010(死の部屋)』死を生と同等の尊厳をもって受け止めた作品。
・『Cube』イスラム教のシンボルであるカアバ神殿からインスパイア、この作品は国際的な論争となった。
作品の特徴と手法
シュナイダーの作品には、「死」「暗闇」「影」という黒いイメージが漂う。
目に見えるもの、見えないもの / 認識出来るもの、出来ないものへのこだわりが彼の作品の特徴である。
作品を作る上で特徴的な手法は、元々存在している部屋の中や隣に、もう一つの部屋、さらにもう一つの部屋と、まるでタマネギ状に複製することだ。
それによって実際に存在していた部屋を見えなくし、そこにいる人にとっては、その部屋が作品であると認識できなくなる。
SUPPE AUSLÖFFELN けりを付ける(スープを飲み干す)
今回の展示は、ナチス・ドイツの国民啓蒙、宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの旧邸宅を買い取り、家財や目録を調べ上げ、建物内部を破壊し、残骸を遺棄するまでのプロジェクトを、立派作品や映像によるインスタレーション構成で展示した、ドイツの戦争の歴史と地域性の問題を扱った作品である。
ヨーゼフ・ゲッベルスはナチスのプロパガンダを積極的に進め、勢力拡大に貢献した人物。
個人的には、けりを付けるという意味を「スープを飲み干す」という表現にしているのが好きだった。
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