仲間の一言

当時、私は介護士をしていた。
前の仕事を諸事情で辞めざるを得なかった時、お年寄りに優しくできるなら資格はいらないと雇って頂いた介護は素人だった私。それでも優しさだけは自信があった。
なのに。
大変なことが起きた。
夜勤明け、自宅に帰り寝ていると、主任から電話がかかってきた。
昨日の夜勤、Sさんと何かあった?
利用者様のSさんが怒っていると言うのだ。
私に酷い仕打ちを受けたと。
ナースコールを鳴らすと、あなただけじゃないのでコールばかり鳴らさないでと言われたり、枕を投げつけられたり、布団を凄い勢いでバタバタされたり、したと。
もちろん、私には全く身に覚えのないことだった。
とにかく、よく、思い出して、時系列で、と主任。夜勤明けのぼんやりな頭を叩きながら、すぐ、いきます、と職場へ再び向かった。
Sさんは認知症はない、と当時は皆が思っていた。私はなにか誤解を受けるような発言や態度がなかったかを考えた。当時、末期癌の父の看護で実家に行くことも多く、確かに普通の神経ではなかったかもしれないと思うと怖くなった。確かにいつもより口調がキツくなっていたかもしれないと私は段々自信がなくなっていった。
とにかく謝ろう、そんなつもりはなくてもSさんがそう感じたなら非は私にある。
そう思った。
職場に行くと、主任が言った。
ご家族は気にしないでくれと言っているし、昨日一緒に夜勤をしたAさんが、そんな事実はない、きちんと対応していたと言っていた。Sさんも少し認知症があるようだ、と。
Aさんが私の対応を見ていたのも知らなかったが、ある意味私の疑いを晴らしてくれるだなんて思いもよらなかった。本当にありがたくて、後日、Aさんに感謝の意を伝えた。
 すると、Aさんは言った。
確かに対応見てたから、そんなことしてないし言ってないと話したよ。
あと、
miyoさんがそんなことするわけないだろ?と言ったよ、まあ、僕ならわかんないけどさと笑ったAさん。
そんなことするはずない。
何という有難い言葉。
私はAさんに一生頭が上がらないと思った。その言葉を付け加えてくれた優しさに心の底から感謝した。嬉しくて涙が止まらなかったことは今でも忘れられない。


#やさしさを感じた言葉

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