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はじめまして、御代田の根です。

はじめまして。一般社団法人御代田の根の本間です。私たちはいま、長野県の御代田町(みよたまち)の中心にある旧役場跡地を町から借り受け、子どもも大人も誰もが利用できる広場をつくろうとしています。

このnoteでは、私たちがこの取り組みを始めた経緯や、目指しているもの、日々の取り組みなどを書いていきたいと思います。

設立時の理事メンバー:(左から)林篤志、本間勇輝、渡辺敦子、内沼晋太郎

子どもたちの放課後、どうしよう?

はじまりは、とても個人的なニーズでした。昨年御代田に引っ越してきたわが家は、共働きで、子どもは小学1年生と年長の2人(当時)。息子たちが放課後を有意義に過ごせる「場所」と、保育を近隣の親たちと分担できるような「仕組み」や「コミュニティ」を必要としていました。

そんな話を同時期に移住予定だった友人たちとしていると、多くの親は同じニーズを持っていることが分かってきました。

こうした子育て世代の課題は、考えてみれば一般的なものです。地域の共同体が解体され、子育ては各家庭で行うことが当たり前になりました。またコロナ以降はその対策のための様々な制約、休校・休園などが頻発し、親や子どもへの負担が高まっています。さらに、子育て家庭に限らず、すべての人にとって、他者と触れ合う場や時間が減り、課題を抱えたまま孤立する個人が増えていることも想像できます。

自分達の住む町で、できるところから、そうした課題の解決へむけた場所や仕組みを一緒につくろう。最初は3家族から、具体的な会話が始まったのは2021年の頭のことでした。

日本財団「子ども第三の居場所」事業

場所探しや仕組みづくりなどのプランニングを進めながら、私たちが注目したのが日本財団の展開している「子ども第三の居場所」事業でした。

この事業は、2021年度からよりテーマを広げたものになりました。「コミュニティ型」と呼ばれるもので、困難な環境にある子どもたちだけでなく、広く地域の子どもたち、そして大人たちへも開かれた場所づくりにも、助成が行われることになったのです。

私たちは一般社団法人御代田の根を立ち上げ、この事業への申請を行い、無事に助成が決定。日本財団「子ども第三の居場所」として、「みよたの広場(仮)」づくりに取り組むことになりました。

旧役場跡地

広場づくりにあたって肝となる場所については、町に町有地の紹介を相談しました。第三の居場所づくりは民間事業ではありますが、子どもや地域コミュニティと関わりをもつ福祉的な側面もあるため、行政との連携が重要になると考えたためです。日本財団も行政との連携を事業採択の前提に置いていました。

複数ご紹介いただいた中で最終的に希望したのは、元々は旧役場(厳密にはシルバー人材センター)があった場所で、現在の御代田町役場や図書館、さらに最近できた複合商業施設MMoPと目と鼻の先。町民の暮らしを支えるスーパーマーケットであるツルヤ御代田店も徒歩圏内という好立地です。

何年も借り手がいない状況であるというのと、今後近隣で宅地開発が行われる可能性があり子どもの居場所として相性が良いとのことで、ご案内をいただきました。

この場所にした理由は、立地の良さの他にもう一つありました。それは、私たちがこの場所をつくる上で大切にする価値観やコンセプトのようなものが見えてきたことです。

森というキーワード

私たちが広場をつくろうとしている旧役場跡地。上の航空写真だとまだ旧役場庁舎が建っていていて、その横には森林が広がっているように見えますが、実際の2021年夏頃の写真はこちらです。

人工的に造成され、有機物の少ない更地です。実際、掘ってもミミズ一匹でてきません。正直なところ、この場所を見た最初の印象としては、立地が優れていること以外、決して魅力的な土地だとは思えませんでした。けれど議論を重ねていくうちに、「森」というキーワードにたどり着きました。

「この土地を、森のような豊かな土壌に戻していきたい」
「様々なプログラムを通してこの場所が地域の森とつながったら楽しそう」
「森と共にある暮らしの入り口にできないか」

背景には、この先行きが不透明な時代における、既存の社会の価値観への疑問がありました。

「お金を稼げる人がえらい」
「生産性が高いことが重要」
「市場で売れないものに価値がない」
そんな現代的な価値観から離れ、自分達が真に大切だと思えるものに向き合いながら、多様な価値を認め合い安心して暮らしていきたい。そのためには、やはり自然のサイクルとバランスを私たちの生活に取り戻していくことが必要なのではないか。

そうした活動の場所と考えると、日本中に見られるであろう現代的な更地はむしろ象徴的であり、適しているのではないか。町の中心地にある、かつては森だったこの場所が豊かになっていく「過程」を大切にしながら、居場所づくりに取り組もうと決めました。

なお「御代田の根」という一般社団法人の名前も、このときに決めました。

どんな土地でも、大木も雑草も、それぞれの「根」を張ります。また人間も同じく、昔から住んでいる人もこれから住む人も、それぞれの人生の中でそれぞれの「根」を下ろして、それぞれの場所に暮らします。木々が育ち、人が行き交う「森」をつくり、それを支える存在に育てばという願いをこめて、「根」という言葉を借りました。

近隣の森とつながる

旧役場跡地が「有機物の少ない更地」であると書きましたが、一方で、町内には様々な理由で管理の行き届かない森が無数に点在しています。

私たちは、建設予定の土地のみに関与するのではなく、関わりをいただくことができた周辺の森にも手を入れながら、地域全体の環境を良くしていきたい。そして結果として人と自然の関係性が深まるような「一石○鳥の居場所づくり」を、住民の方に参加していただきながら進めていきたいと考えています。

具体的には、例えばこのような感じです。

まず、旧役場跡地には圧倒的に有機物が不足しています。その有機物(たとえば枯れ葉や枯れ枝、朽ちた倒木など)を、近隣の森からいただいてきます。いただく、と書きましたが、それは森に必要な手入れでもあり、同時に森の側の環境を改善する作業にもなります。

次に、集まった有機物を旧役場跡地で活用していきます。溝を切ってそこに埋め込んで「通気浸透水脈(水脈)」をつくります。水脈は、表面の人工的に造成された荒れた土壌と、その下にある土壌とをつなぐ役割を果たし、またそこに埋め込まれた枝や枯れ葉の間に菌糸がはって、微生物のすみかになっていきます。

この山の作業や水脈づくりのような作業を、私たちはワークショップ的に町のみなさんに開いていきたいと考えています。これはあくまで一例で、他にも今後さまざまな取り組みを行っていく予定です。落ち葉や刈草を持ち込めるようなステーション機能もつくりたいと考えています。

(↓4月に行った水脈づくりを中心としたワークショップ↓)

(↓次回の作業日程)


ウッドデッキ+トレーラーハウスの広場

森や土壌の話が続きましたが、私たちの中心にあるのは子どもと、それに関わる大人の居場所づくりです。最後に、実際の広場はどのような空間にしたいのか。その構想について書いていきます。

御代田の冬はきびしいです。当初は寒さをしのぐことができる、公民館や児童館のような大きな建築物をつくる可能性を考えました。けれど「森」という言葉にたどり着き、場づくりのプロセスに関わること自体がその人の「居場所」になると考えるようになったことで、可変で、出来上がったあとも「つくる」ことを続けられるような場であることを優先することにしました。また、周辺の開発がまだ未確定であることや、都市計画法上の開発行為になることを避けたいという事情もありました。

そこで、ウッドデッキを中心としたセントラルエリアと、小型のトレーラーハウスのようなものがいくつも集合した、可動式の、半屋外型の広場を構想しています。

子どもをはじめとする多様な一人ひとりが、それぞれのニーズを叶える場。それは、誰かに用意された場所ではなく、自ら考え、つくることができる場である。利用者だけではなく、作り手として参画できる余白が必要だ。そう考えたのです。

小さくて多様な使い道があるものを、利用者のニーズを想像しながら可動式でつくっていきます。ストーブがあって寒い時も集ってお茶ができるような空間、本を選べるミニライブラリー、ひとりになれる空間、キッチンカーなど……。すでに、子どもたちが何かを販売できそうな小型のトレーラーや、思わず登りたくなるようなスケルトンカーなどが現地に導入されています。

また、様々な「道具」も現場に整備していきます。地域の未利用資源、ある人にとっては余剰である資源がこの場所に集まり、それらが加工・活用されるための生産装置です。例えば薪割り機や、枝を燃料として暖かくなるロケットヒーターのベンチなど。こうしたものに自然に親しんでいく結果、暮らすために必要な資源が地域コミュニティ内で循環するような世界を目指します。

その他、常設でカフェの機能を設けたり、月に1回くらいマルシェのような楽しい場も企画していきたい……。思いはふくらむばかりです。

こうした場所を、私たちは「みよたの広場(仮)」と名付けました。

「子どもはもちろんのこと、様々な人に使ってもらいたい」という思いから、最初は「公園」という名前を検討していました。一方で、公園という言葉の持つ公的なイメージ、遊具を想起させるようなイメージを持って人が訪れてしまうと、期待から外れてしまうという意見もあり、開かれた自由な場所であり、またそこから何かが産まれそうな意味も持つ「広場」に落ち着きました。ただし、(仮)を入れている通り、この名称も、これからこの場所に関心をもってくださった皆さんと一緒に決めていきたいと考えています。

建築途中ですが、先日は郷土料理「おにかけうどん」をつくって皆で食べました。テントを立てたり、ここにキッチンカーがきたり、色々なアイディアが実現するみんなの広場を目指します

場所のオープンは夏を目指して、目下鋭意工事を進めています。そして繰り返しになりますが、この場所づくりプロセスにできるだけ多くの方に参加いただきたく、ワークショップ的な形で開いていきます。

最新の情報は、これからインスタグラムで発信していきますので、是非フォローください。そして、これから「みよたの広場(仮)」をどうぞよろしくお願いいたします!

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