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だからそれは運命

「…何聴いてるんですか?」

「知ってるかなぁ……クリープハイプっていうバンドです。」

「へー、わたしもそれ聞いてみよ。えっとー……もう1回…、クリープ……何でしたっけ?」

「クリープハイプ!です。でも…ちょっと声が独特というか…、気に入るかどうか…。」

私がクリープハイプを知ったのは、2020年11月、息子が以前通っていた塾の先生と、久しぶりに、吉祥寺駅ビルでバッタリ遭遇した時の会話の一部からだった。
イヤホンをしてクリープハイプを聴いていたその先生は、息子がとてもお世話になった人だ。

帰宅してすぐに、クリープハイプを検索した。
一番最初に聞く曲はどれがいいかな。第一印象は大事だからと思い、みんなの感想やおすすめ曲を探した。

あの時先生に、おすすめの曲を聞いておけばよかったなと思いながら、最初に聴いたのは「モノマネ」だった。発売日からまだ1ヶ月ほどしか経っていないためか、目についたからかもしれない。

「すごくいい曲だ!!たしかに独特な声だけど、全然いやじゃないな、もっといろいろ聞いてみよ。」

次から次へと、1日で何曲聞いただろう。
1週間で、今聞くことができる曲全部聞いてやろう。止まらなくなった。

これがクリープハイプとの出会いだ。

学生の頃から好きなバンドのファンクラブへ入会したり、ライブハウスへ行ったり、学校帰りに試聴コーナーがあるHMVへ通い、流行ってる洋楽を聞いたりしていた。出産するまでは、そうやっていつも音楽を追いかけていた。

育児で余裕がなくなってから十数年間、気がつくとあまり音楽を聴かなくなっていた。

クリープハイプとの出会いから、とりつかれたように曲を聴き、音楽から遠ざかっていたその十数年間の時間を、必死に埋めようとしていた。

こんなすごいバンドがいたなんて。こんなに耳に残る曲聴いたことないよ。
クリープハイプの曲を聴けば聴くほど、なぜか、はるか昔の子供の頃の記憶が蘇ってきた。

幼稚園、小学校、塾、会社、両親、きょうだいたちからも、ずっと孤独と疎外感を感じて生きてきた私に、曲を通して言ってくれている気がした。

「きみはいていいんだよ、存在していいんだ!」

と。

涙があふれて止まらなかった。なぜだか嗚咽して、自分でもどうしていいかわからなくなるくらい、まるで体の中に溜め込んでいた何かをはき出すように泣いた。

そして尾崎世界観が創る曲、詩、歌声が、渇いた体にしみこんでいくような、一部になっていくような感じがした。

魂が揺さぶられるって、こういうことなんだ、と思った。

毎日毎日イヤホンで曲を聴き、尾崎世界観の本を読み、ラジオを聴き、動画を見て、「はやくすべてを知りたくて」
夢中になった。
太客にもなった。

そんな頃、芥川賞候補に選ばれ、その後「情熱大陸」が放送された。
テレビ画面から伝わってくる尾崎世界観は、「繊細で芸術的で儚ないようでとても強く、人生を必死に誠実に生きている」
ように見えた。周りからいろんなことを感じとってしまうところが、少しだけ私と似ている気がした。


長期間ライブが中止となっていた2020年が終わる頃、年明け1月に1年ぶりのライブが開催される、と知った。

私にとって初めてのクリープハイプのライブは、1年ぶりのその振替公演だった。

さらに開催延期を経て、3月3日ひな祭りに開催されることになった。

中止にならないか、そして自分自身、久しぶりに行くライブで気後れしないかという不安な気持ちと、初めてクリープハイプに会える嬉しい期待を持ちながら、いよいよ2021年3月3日がやって来た。

初めての東京ガーデンシアターは想像より大きかった。広い会場の中で自分の席につき、ライブが始まるまで、近年感じたことのない高揚感と緊張感で、体がくすぐったいような、ザワザワするような感じを味わっていた。

始まりを知らせるように「ボレロ」がどんどん大きくなり、緊張は最高値まで達した。

幕が上がるとすぐに緊張は驚きに変わり、ステージに釘付けになった。

「本物の尾崎世界観だ!すごい!」

声出しできない分、精一杯拍手をした。バンドの大きい音と尾崎さんの歌声が、私の体の中まで響きわたっていた。

5%」を聴いている時、ずっとこのままここにいれたらな、時間が止まってしまえばいいのに、と思い、その瞬間をかみしめた。

初めてのクリープハイプのライブは記憶の中の大切な宝物だ。

それから今まで何度もライブに足を運んだ。

そして2023年3月11日、12日、幕張のアリーナツアーは、今までのクリープハイプのライブと違っていた。

尾崎さんのすごい気迫のようなものを感じた。

HE IS MINE」では、いつも動画でしか見たことがなかった尾崎さんの溜めや、「今度会ったら…」の声出しをして、少しはずかしくて、すごく興奮して、初めてちゃんとファンになれた気がした。

最後の曲「二十九、三十」では、こんなにも寄り添ってくれる尾崎さんが

「ほんとに大好きだ!!」と改めて思った。


40代でクリープハイプと尾崎世界観を知って、ファンになった。息子は4月から高校2年生。育児も落ち着き始め、最近は人生の折り返し地点に来たように思う。

クリープハイプに出会う前まで、こんな気持ちも知らずに、この先淡々と過ごしていくのだろうと思っていた。そんな私にドキドキすることを教えてくれて、孤独を感じて生きてきた私に、味方ができたと思わせてくれた。

私にとってクリープハイプに出会えたことは運命なのだ。

家事に追われ、仕事や子供のことで悩み、クタクタヘトヘトでも、クリープハイプの曲を聴くと、不思議なくらい修復される。私の人生になくてはならない存在。

だからそれはクリープハイプ。

#クリープハイプ
#だからそれはクリープハイプ

♪ 本当なんてぶっ飛ばしてよ ベイビー

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