パルマ劇場歌手への道(22)~空気~

※この文章は2006年10月にブログ記事にしたものを編集し直したものです。100円と表記されるかもしれませんが、無料ですべて読める「投げ銭スタイル」ですので、お気軽にご覧ください。


「Corale G.Verdi」


再びやってきてしまいました。

二度とくることはないかもしれない、と思っていたところなのに。


私の前に立ちはだかる牙城であった黄色い建物も、

見え方が以前とは大分違います。


この日はまるで、私を招き入れるかのような・・・。


しかし、勝負はまだ始まってもいません。


気を引き締めて隣のバールへと入ると、一言挨拶を交わすと、

今日は堂々と奥の扉より階段を上って行きました。


以前の待合室に入ると、前回のオーディションのときの熱気とは打って変わって、

そこはひんやりとした空気が漂っています。


そのフロアにいるのは私以外には隣の部屋で掃除をするおじさんのみでした。

時間の10分前ですが、関係者は誰も到着していないようです。


窓から外を見ると、

そこにはパルマを代表するドゥカーレ公園が広がっています。

既に半ば散ってしまった紅葉と、その公園を行き来する人たちを眺めながら、

大きく深呼吸をし、軽く声を出してみました。


「よし、大丈夫。」


のどの調子はまったく問題がありません。

あとは、いつも通り歌うだけです。


ちょうど11時に差し掛かった頃、

後ろのドアがギィと開きました。

誰もいない空間には、そのかすかな音すら響き渡ります。


そして、姿を見せたのは初老の紳士でした。

付き添いなど、他には誰もいません。


「あなたが、えーと・・・」

「宮本です。始めまして。」


「よし、早速歌を聴かせてもらいましょうか。」


つづく・・・


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