パルマ劇場歌手への道(24)~夢見た者は~
※この文章は2006年10月にブログ記事にしたものを編集し直したものです。100円と表記されるかもしれませんが、無料ですべて読める「投げ銭スタイル」ですので、お気軽にご覧ください。
「よし、分かった。」
ものの3分くらいしか歌っていないのにオーディションは終了です。
そして、その結果は・・・、
やはり、今回はダメだったようです。
なんてことになると、本当に救いようのないブログになってしまうところでしたが、
「オーケー、合格です。」
「え、本当ですか!?」
「劇場にドメニコ氏がいるので彼のところに行き、書類に必要事項を記入して下さい。」
(なぜファーストネームに氏をつけて呼ぶのかは不明)
私は促されるまま劇場へと向かいました。
そして、その途中、パリのセーヌ川になぞらえられたパルマ川を渡ったころ、
やっとのことで、徐々に実感が湧いてきました。
これで、一つの夢が叶った。
でも、この文章を書いている今現在ですら信じられません。
本当に私がパルマの劇場でプロとして歌ってしまっていいのでしょうか・・・?
ここまでたどり着くまで、長かったような短かったような・・・。
音楽留学を目指してから12年、
歌を本格的に勉強し始めてから7年、
劇場専属歌手を目指してから5年、
イタリアに留学してから1年、
おそらく運には恵まれているのでしょう。
もちろん、自分でも努力をしてきたつもりではあります。
でも、一番大きいのは、
今まで共に学び、励ましあった友人たち、
愛情を持って熱心にご指導くださった先生方、
精神的にも経済的にも助けてくれた家族、
この他にも私に大なり小なり影響を与えてくださった皆様の、
大いなる支えであることは間違いありません。
本当に私は恵まれています。
こんなに嬉しいことはありません。
心の底から皆様に感謝いたします。
しかし、私の夢はまだ途上にあります。
これからも、劇場専属のソリストになるなど、
さらなる夢に向かって邁進していきますので、
どうぞ、これからも私を見守っていてください。
さて、劇場へと到着し、楽屋口よりドメニコを呼び出します。
5分程待つと彼が現れました。
「チャオ、Fumi。オーディションはどうだった?」
一通りの経緯を話すと、彼につれられて劇場内のオフィスに向かいました。
そこは、とても外観からは想像できない近代的な設備の整った一室で、
広い部屋の中には1人分のデスクが置いてあり、
まるで社長室のような雰囲気です。
(実際の社長室は見たことがありません。私の勝手なイメージです。)
「このデスクはいったい・・・?」
と訪ねると、
「これは俺のデスクだよ。」
エェェェ(°Д°!!!
なんですかそれは?
彼は単なる劇場のいちアルバイトだと思っていたのに、
こんな立派な部屋まで与えられて、
・・・実はえらい人だったんですね。
(それでも下っ端かもしれません。実際の役職は聞いてないので・・・。)
でも、これで彼がオーディションの話を持ってきてくれたのも納得です。
「本当に今回はありがとう。夢のようだよ。」
今までの感謝の気持ちはこれでは言い表しきれませんが、
「なに言ってるんだよ。でも、本当に良かったな。」
彼は私以上に喜びの表情を浮かべて祝福してくれました。
本当に、今回の件は彼に始まり、彼に終わると言った感じでしたね。
正直、絶望に突き落とされた時も何度かありましたが・・・。
彼には何か恩返しをしなければなりませんね。
日本からお土産に持ってきたのはみそ汁くらいしかありませんが・・・。
そんなことを考えていると、
そんな考えがまるで見透かされているのか、
冗談っぽい口調で彼は言いました。
「Fumi、じゃあ、俺が日本に行ったら歌わせてくれよな。」
「もちろん!」
おしまい。
ご愛読ありがとうございました。
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