タンホイザーの涙 ヴェーヌス・セルⅡ

自然と腰が浮いてくる。息が荒くなってきた。画面上からは妖しくPGCが桜井を見つめている。ベルトが解けた。スラックスのボタンを外し、チャックを下げる。桜井の下着には既に小さくシミができていた。さらに息が荒くなる。下半身に手をかけている状態でも目はPGCに食いついている。頭頂部から汗が流れてくる感じがした。桜井は研究室にいることなど既に忘れて、頭の中はこの後に身を委ねるであろう快楽でいっぱいになっていた。スラックスを脱ぎ捨てると高校時代に陸上部の長距離で鍛え上げた筋肉の程よくついたハリのある脚が露わになった。黒いボクサーパンツは既に今にも張り裂けそうな昂りを辛うじて抑えている。なんで細胞で興奮しているのだろう。桜井は何度も逡巡した疑問を再び頭に浮かべた。しかし、波のように繰り返し覆い被さってくる快楽で上手く思考がまとまらない。あぁ、もう、気持ち良ければなんだっていいじゃないか。気持ち良ければ。右手は桜井の意思とは関係無くボクサーパンツを弄っていた。自分で弄っている意識は全く無い。それは画面上のPGCからもたらされている快楽で頭の中が占められているからなのか、それすらも分からない。どうだっていい。気持ち良いのだから。桜井は上着にも手をかけた。ジャケットを脱ぎ、シャツを脱ぐ。桜井はあっという間にボクサーパンツのみを身につけた状態となった。相変わらず視線はずっと位相差顕微鏡の画面に映るPGCだけを捉えている。魅力的だ。なんて美しいのだろう。息とともに声も漏れてきた。もしも外に誰かいたらマズいのに抑えられない。気持ち良い。桜井は、ただ快楽に心身を預けていた。ボクサーパンツははち切れんばかりに膨らんでいる。それでも弄る右手の動きは止まらない。PGCを見つめる目が虚になってきた。左手が桜井の小さい桃色の乳首を弄り始めた。飽くまで桜井は無意識である。ただ快楽ばかりを求めているのだった。ボクサーパンツのシミはさらに広がっていた。研究室でタブーを冒している背徳感も快楽をさらに高めていた。PGCにまるで全身を愛撫されているかのような感覚が桜井を包み込んでいた。理性はPGCへの欲情に疑問符を投げ続けているが本能は疑問符を飲み込むほどに快楽の泉を湧かし続けるのだった。光妃という彼女がいるにもかかわらず、桜井はPGCとの"行為"を止められずにいた。

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