何度も、同じ記憶を、思い出す。

何度も同じ夢を見る。夢ではない。目覚めながら、思い出す夢。

それはドイツの森、深く。

僕は馬車で旅路を急いでいる。しかし、どうしても夜が更けて、

深い森の中の小さな町に宿泊する。

そこには、三軒の綺麗なホテルが大通りに面していて、

街といっても、大通りがひとつと、それに面したホテルとレストランと民家しかない。

とにかく三軒のホテルは青、ピンク、オレンジ色の外壁をしていて、

仲良く三軒並んでいる。どれも三街建てで、僕は、その青い壁のホテルの

三階に止まって、大通りを見下ろしている。

明日、明朝に出発するまで、とにかく新しい曲を仕上げねばならない。

急いで譜面を書いている。

時間は午後八時。レストランに行かないとしまってしまう。

でも、ある程度まで書き上げたい。僕は大通りの小さな喧騒を聴きながら、

筆を走らせる。

僕は書いている、譜面を、深い森の街で。

ただ、それだけの記憶。

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