1泊0円、添い寝付き
※ノンフィクションです
田舎の終電は早い
「酔いつぶれるまで奢ってやる」という友人と中3まで過ごした地元でひたすら飲み続けること4時間強、終電の時間が差し迫っていた。
その終電の時間がこちら。
あまりに早い終電は「終電に間に合わせよう」という気分すら削ぎ落とす。
一応飲み始める前は終電に乗って帰ろうという思考も1ミリ程度残ってはいたものの。
とりあえず佐原駅前の居酒屋の2階席から優雅に終電をお見送りして宴会を続行。
終電で帰るという選択肢を自ら捨てたため残された選択肢は3つ。
①駅前のルートインに宿泊
佐原は田舎といえど上級田舎(?)。
ルートインくらいはあります。
ただ、この件において悪いのは終電を逃した自分ではなく、22時代の運行をもって終電と言い張る成田線であり、その成田線の怠惰によって自分が不利益を被ることなどあってはならないのです。
早すぎる終電のせいでルートインに自分の万札を差し出すなど考えるだけで腸が煮えくり返るよう。
佐原駅前の宿泊施設はルートインただ1つだけ。
価格競争を知らないルートインの宿泊料はなんというかアレ。
これ、JRとルートインが結託して佐原駅前で飲む人間から金を巻き上げているのでは?
あまり陰謀論者を舐めるなよ。
却下。
②わんぱく公園で野宿
わんぱく公園とは私が小学生時代によく遊んだ佐原地区ではそれなりに有名な公園です。
幅推定4mくらいのクソデカ滑り台があって、ズボンが擦り切れるくらい滑り倒した。
結局段ボールを敷いて滑るのがいちばんおもろいと気がついた頃には4着くらいのズボンが犠牲になっていました。
何度も競馬場の門前で野宿している人間にとって野宿自体に抵抗はないものの、この公園は稀に極太の蛇が出る。
あと公園中央にあるパチモンのスフィンクス像の目が夜になると光って動くという都市伝説があって、それが怖い。
却下。
③成田空港のベンチ
終電を見送った後に思いついたこの案。
思いついた時は感動と飲みすぎで震えました。
早朝便に搭乗する人のために成田空港は夜間も解放されている。
しかもみんな考えることは同じなので、昼間にやれば社不認定されるようなベンチ寝っ転がり芸をしても浮くことはない。
さらに空港内は当然空調が効いていて暑さに苦しむこともない。
とんでもない名案に辿り着いてしまったと思いました、この時は。
実践編
23時半を回り、成田空港に行くにはそろそろ解散をしないと洒落にならんのでいい加減お開き。
ありがたいことに飲酒していなかった友人に車で京成成田まで送ってもらいました。
乗る電車は正確には終電の一本前。
ガチの終電はイブニングライナーという乗車券の他にライナー券への課金を求められる特別な列車です。
日付を超えても安心だと油断した人間から乗車券よりも高い特別料金を貪りとる素晴らしい罠。
極めて悪質。
鼓膜ぶっ殺しトンネルを走ること数分で第2ビルに到着。
終点の成田空港は第1ターミナルの最寄りで、こちらも夜間解放はされていますが、運賃をケチりたいので意地でも第2ターミナルか第3ターミナルで寝床を見つけなければならない。
翌日の搭乗に備える人々で殆どのベンチが埋まる中、
1箇所だけもぬけの殻なベンチを発見しました。
その場所とは
エスカレーターの真下。
公開処刑かな?
安いアパートでは人が死んでいるように、穴場には穴場となりうる理由が必ずあるわけですね。
地下一階へと降り立った全ての人間が真っ先に目にするものは、行き場を失い空港のベンチで無様な寝相を晒す俺──────
開き直って爆睡を決め込むも、軽蔑の視線は固く閉じたはずの瞼を容赦なく貫通する。
寝ることに全神経を注ぎ続けること数十分、「特等席(笑)」にもついに隣人がやってきました。
先程も添付した画像ですが、このベンチは背面を合わせて1組となっており、2人が眠れるように設計されています。(眠るために設計されたものではない)
そんな特等席で一晩を共にする隣人はクソデカキャリーケースを引っ提げた中東系と思わしき夫婦。
1人ですら狭く感じるベンチでどうすんだと思いきやこれ⬇
天才はいる。
自分に一極集中していた痛い視線が2人に分散してようやく眠れそうだと思った矢先、この2人の“ナイトショー”が開演してしまった。
リズミカルな寝返りは背中合わせの座席の背もたれを通して自分の寝床に地響きを起こす。
次第にその地鳴りが心地良くなって寧ろ快眠───
出来るはずもなく始発電車の時間が来ました。
起承転結は特にありません。
おしまい
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