質問の答え

~数ヶ月前、喫煙所にて~
宮戸川(以下、宮)「バトルさんの新刊発売イベントはあるんですか」
森「考え中です」
宮「イベントやって欲しいよぉ、おら、馬鹿馬鹿しいイベントに行きたいよぉ」
森「そうですか…」

~数週間前、酒場にて~
宮「イベントが楽しみすぎて眠れない」
後藤(以下、後)「質問コーナーやりますよ」
宮「Twitterで質問の募集をしてもいいですかね」
バトルロイヤル風間(以下、バ)「それはいいけど、当日ビール用意しておいて」

このような経緯で、イベントの前にTwitter上で出演者への質問を募った。人望のなさ故にあまり質問はもらえなかったが、その少ない質問を大切に、そっとハンカチに包んで亀戸にむかった。人望はないが責任感はある。

ここは亀戸、6階和室。「オレたち将棋ん族エピソード2出版記念・32年も!大感謝祭」の会場。私はこの会を非常に楽しみにしており、前日は「亀戸は亀有じゃなくて亀戸、亀戸」と100ぺん唱えて眠りについた。

この会はバトルロイヤル風間さんの新刊出版を祝う名目で集まり、みんなで馬鹿になって笑おうという理念のもとに、酔った勢いで企画された。全ての発言はそこに何の意義も求められておらず、出演者は終始真面目にふざけている。そんな会を楽しんだ私が内容を切ったり貼ったりあんにゃもんにゃして、預かった質問の答えを書く。
将棋が好き、バトルさんの漫画が好き、木村先生を愛している、後藤さんに義理がある、森さんと喫煙所で会った、近所だ、暇、そういう人たちが亀戸に集まって笑った日のお話。

出演者の木村一基八段が客席に座っている。控え室に控えない木村。木村の背中を見放題。木村先生がトークショーにおいて最高のゲストにも巧みな司会者にもなったのは将棋ファンなら容易に想像つくだろう。それに加えてよく笑う良い客にもなっていたのよ、この日の木村先生は。

トークショーの開始(画像提供・木村ファン)。

司会の後藤元気さんが、流暢に話題をふっていく。この方は何でも出来るな。

バトルさんとゲストの木村先生は「年にいっぺん、近所のガード下で、自転車ですれ違う仲」という親密な関係。
木「マンガは楽しみに読んでましたよ。第一人者をおもしろおかしく描くわけですけど、羽生さん怒らせちゃったら恐いんだよぉ、知らないの?」
バ「怒られたらやめよって。大山先生の逆鱗に触れたらやめればいいや、と」
後「棋士のネタ、タイトル戦の前なんかはあらかじめ用意してたりするんですか?」
バ「用意はしないですね。まあ木村先生の場合は七冠まで用意してますけど」
木「(客席に向かって)なぜそこで笑う!まあ活躍しないとネタにならないわけで、マンガになるのも目標なんですね」

後「右の天彦さんはイケメンなのに左の天彦さんはひよこみたいな……」
バ「役によって顔を変えますね、ネタによって。昔の羽生さんなんかは羽生睨みのイメージがあって目をきつく描いたけど、よくよく見たら垂れ目だった」
木「イメージってありますね。羽生さんの顔をマジマジみることはないんですけど、対局のイメージだと、つり上がってるんですよ」
後「羽生さんに睨まれたらどんな感じですか?」
木「睨み返してやろう……とは思わないですけどね」

木「描きにくい人はいますか?」
バ「最近だと天彦さんは大変。あのひとカッコいいつもりでいるじゃないですか。カッコよく描いちゃたほうが楽なんですけど、四コマで面白く表現するのが難しい」

バトルさんがコントの支度をする間、客席にいた観戦記者の相崎さんがステージにあげられる。将棋関係者は木戸銭を払ってトークもさせられることになっている。
木「相崎さんと後藤さんから見て表現しやすい、しにくい棋士とかいますか?」
相崎「対局の後で改めて取材して記事にするんですけど、木村先生みたいにレスポンスが早い先生はありがたいです。羽生先生もあんなに忙しいのにメールはすぐ返ってくるし、どうやって時間つくってるんでしょうね」
後「何人かいるらしいですよ。将棋が強い羽生さんと、将棋の弱い羽生さんと、事務をこなす羽生さん」
木「表現しにくい人は?」
後「たとえば、山崎隆之という方は、感想戦で何言ってるかさっぱりわかんないんですよ。ご自身の中では成立してるみたいなんですけど、5分後に間逆のこと言ってたり。何言ってるか全然わからないんで、どう書いてもいいかなと」
木「まあ、つまんない人が勝つと書くの困るもんね。ほら、二人とも答えにつまってるでしょ?間違ってない」

ああ、前半のトークショーについて書きたいだけ書いていては、いつまでも質問の答えにたどりつかないわ。

バトルさんのコントは、歌いながら踊りながら似顔絵を描く、歌いながら腹筋しながら似顔絵を描く、歌いながら腕立て伏せをしながら似顔絵を……という、馬鹿馬鹿しさを佃煮にしたやつ(画像提供・バトルファン)。

そして出来上がる似顔絵はそっくりなのだから、会場は大盛り上がり。

質問コーナー。お酒がらみの質問が多いのはゲストが木村先生だから。
バ「僕自身はいい酒だと思ってるんですけど、酒乱っていう人もいるし、まあ見解の相違ですよね。お酒ないと物事が進まないし。この会だって森さんが酔っ払ったからやることになったし、週刊将棋の連載だって編集長の大崎さんとお酒飲んで仲良くなったからだし」
後「お酒は何をどれくらいいくんですか?」
木「ビールですね。家だと三本くらい、外だと数えないじゃん」
バ「日本酒とビールとか、ふたつ並べるんです。つまみにあわせて色々飲みますよ。つまみ至上主義なんで」
後「私は初手ビール、2手目ハイボール、そのあと焼酎とかですかね」

預けていただいた「最近の飲酒状況は?」への答え・・・バトルさんは駅でシャツを脱ぎ捨てハリウッドザコシショウの真似をするくらい、木村先生はクレジットカードを無くして2時間探したら下着の中から見つかったくらい、飲んでいるし酔っている

「来る人、手をあげて~」という、誰でも参加出来る打ち上げ。各テーブルに酔ったバトルさん、酔った木村先生がまわってきてお話して下さる。私はTwitterで募集した質問を大切にハンカチに包んだまま打ち上げに参加し、変な名前の中華料理屋でそのハンカチをそっとほどいた。質問コーナーで採用されなかったものをこの場でぶつけてやる。募集の経緯をご説明し回答を公開することをご了承いただいて、酔った私が酔った木村先生と酔ったバトルさんに聞いてきたよ、質問をしてくれたあなたのために。

預けていただいた「羽生くん×羽生さんタグを認知しているか聞いてくださいまし」への答え・・・酔った木村先生「見たことありますよ。私もアニメかなにかの画像と並べられてたのを見ました」(この後、5分かけて広報や普及活動、ファンへの接し方など、木村先生の素晴らしいお考えをうかがって私はすっかり惚れてしまう)

預けていただいた「アマチュアとの指導対局で勝たせてあげようという人と勝たせない人との差は何ですか?」への答え・・・酔った木村先生「それは、言わないね。言えないんじゃなくて、言いません。継続して指導する人と一度だけ指導する人でも違うし、指導対局への考え方もそれぞれだし、みーんな違う。これは言わないのがいいんですよ」(この後、5分かけて指導についての木村先生の……)

預けていただいた「バトロイ先生がこれは最高に良く描けた!もしくは我ながら一番好きだわーというような思い出の四コマがあれは教えていただきたいです」への答え・・・酔ったバトルさん「最近だと最後から二番目の、羽生世代郷田世代ってのが気に入ってますね。32年やった全部を今思い出して選ぶのは無理だけど、ちょっとした人情が描けた四コマが好きだな」(これは第3弾出版イベントがあったら、その時にもう一度質問するとお約束した)

最後に私からの質問を。
宮「バトロイさん、バトルさん、風間さん、いろんなふうに呼ばれると思いますけど、何て呼ばれたいですか?」
バ「美人なら雄吉のゆうちゃんがいいけど、バトルって呼ばれるのがいいね。『バトル』っていう固有名詞じゃない、一般的な単語がつまり自分のことを指すって嬉しいよ」
とのお答えをいただいた。毎週金曜日が締め切りだったため、連載が終わってから金曜の夜を寂しく過ごしているバトルロイヤル風間さんに、顔に自信がある方は「ゆうちゃん」と、そうでない方は「バトルさん」と声をかけて誘ってみてはいかがだろうか。











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