棋士と苺クイズ

穏やかな春の午後、古ぼけた喫茶店で彼と私は差し向かい。彼の前にひとつ、私の前にひとつ、苺のショートケーキ。

棋士は居飛車党と振り飛車党に分けられ、また、私のショートケーキの苺を取る者と取らない者に分けられる。

【彼が谷川の場合】

彼は神々しいオーラを放ち、無表情で座っている。どうしてここにこいつとこうしていることになったのだろうと、世の理不尽を恨んでいるのかもしれない。彼の美しい指が触れたステンレスのフォークは、磨き上げられた銀食器のように輝く。彼は自分の皿に目もくれず、私の苺に銀(ステンレス)のフォークを刺して口に運ぶ。「十七世名人にして日本将棋連盟会長、寺の息子である谷川が貴女の苺を食べましたが、貴女はどうしますか?怒る?泣く?私を非難する?この私を?」と試す彼。今日は黒い方の彼なのだな、そう悟った私はどじょうすくいの動きで「タニーが取った!タニーが取った!」と歌い踊る。彼はひとつ頷いて伝票を手に去る。きっとまた、彼とこうして過ごせる。

ということで、谷川は私の苺を取る棋士。

【彼が羽生の場合】

将棋盤の前を離れた彼は天使だ。盤の前では鬼なのに。穏やかに、ニコニコと、ぼんやりと、居る。運ばれて来たショートケーキに、彼は「ケーキを食べに来たんだな」と気がついたのね、そう思った私はあまりにも浅はかで、彼が気づいたのは「苺を食べに来たんだな」ということだった。2つのケーキの2つの苺を食べて、またニコニコと微笑んだ。私は彼の笑顔と2つのスポンジをスケッチしたいと思った。

ということで、羽生は私の苺を取る棋士。

【彼が渡辺の場合】

彼はケーキがテーブルに置かれる前から、店員がお盆に載せ運んでくる2つのそれを見ている。「美味しい方の、クリームが多い方の、苺が大きい方のケーキが僕の前に置かれますように」と念を送っている。彼はケーキが大好き。大好きだから、美味しい方の、クリームが多い方の、苺が大きい方のケーキを1つ、あっという間に平らげて競馬新聞をひろげた。

ということで、渡辺は私の苺を取らない棋士。

【彼が加藤の場合】

彼は喫茶店に入ったとたん「ケーキを4個とね、カルピスを3杯持ってきていただけますでしょうか!」と言ったので、前提が成立しなかった。


ここで問題です。森内、佐藤(康)、丸山、三浦はそれぞれ私の苺を取る棋士でしょうか、取らない棋士でしょうか。全て当てた方には羽生が残したスポンジをあげます。



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